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企業内の知識流通と情報系システムの解放を目指すディスカバリーズ社 社長によるデジタル日記。

グローバル化と日本企業の強み

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グローバル化と日本企業の強み
ダブル・ループマーケティングのすゝめ (2)


グローバル化の流れの中で世界市場にもスコープを広げる企業が標準となっていくのと同時に、現地法人化、現地採用で社員のグローバル化も進んでいくでしょう。グローバル企業となった楽天や、ユニクロを展開するファーストリテーリングは世界中のオフィスで英語を公用語にするなどの例は大きな話題になりました。グローバル化において重要になってくるのは多様性です。多様性とはお互いの文化・習慣を認め、理解し合う中で生まれる調和であり、古来より日本人が極めて高い能力を有しているとデフタ・パートナーズ 会長の原 丈人氏も評価されています。グローバル化と多様性は相反する部分がありながら、一方で日本人にはその両方を特性にする能力があると日本人は自信と誇りを持つべきかもしれません。

 

通常、経営戦略を描く際には、自社にどんな強みがあるかを客観的に把握して、向かおうとする方向(ベクトル)の歩み方を分析・計画します。ドラッカーが著書「乱気流時代の経営」の中でも「あらゆる者が、強みによって報酬を手にする。弱みによってではない。したがって、常に問うべきは、我々の強みは何か、である」と書かれてます。ただ、どんなに素晴らしいビジョンもストラテジーも実現するための旗印であり、ここに「人」と「実行力」が加わってこそ。当然のことながら、人ひとりのチカラは限界がありますから、目的に向かって団結していく、それが組織です。

 

昨今は市場や顧客ニーズの多様化によって製品やサービス、技術がより深化しており人ひとりで製品情報を全て把握することが難しくなり、スペシャリスト化による専門領域毎の組織形態を取る企業は少なくありません。例えば営業も従来のフィールド営業に加えて技術専門営業やサービス専門営業が顧客の要望や環境に応じてアサインされたり、マーケティングも広報全般からメディアリレーション専門からイベント、広報、あるいはデジタル、ソーシャル専門などといった幅広いジャンルがあります。人事や総務などはアウトソーシングするケースもあるでしょう。

 

こうしてスペシャリスト化/専門領域化した組織の仕事は常に自部門だけでは完結しません。顧客の声や自社製品やサービスを扱う部門であれば、営業部門もマーケティング部門もサポート部門も常にさいしん同一の情報を扱わなければいけません。また、こうした顧客との接点を持つ部門から開発部門や流通部門には顧客の声を届ける必要がありますし、経理や人事、総務、情報システム、経営企画はこれらの部門へ業務の支援をしています。

 

こうして部門間で協力し合い目的を遂行するように組織化され、連携の緊密化を図るために目標設定を行います。多くの場合、会社や事業の目標を中心に事業部、部門、部署、グループへと段階的に目標を絞り込んで、最終的には社員個人のレベルの目標設定を行うことで組織から個人までくし刺しにした企業活動が行えるわけですが、設定が甘いとブレが起こります。さらには、組織の目標よりも自部門や社員個人の目標や利益を優先する社員が、しばしば連携にブレーキをかけることがあります。

 

経営者がことある毎にビジョンや目標を訓示することは、こうしたブレの修正をかけるためとも言えますが、同じコンテキストを持った日本人同士ならまだしもグローバル化が進む企業においては、徹底して「伝える」努力が必要です。伝えるとは、言葉や文字にするだけでなく、発信者側の意図が正確に受信者側の理解に達することであり、社員の数が多いほど仕組みや仕掛けが必要になってきます。方法については後述することにしましょう。

 

日本人は古来よりチームワークに長けていました。グローバル化によって標準化が進む中でも、適応能力の高い日本人の多様性が、多人種な企業の中でもチームワークを発揮して組織する力は強いでしょう。組織は刺激を受け合い、お互いに高め合っていく健全な人たちに構成されていれば、組織は化学反応を起こしながら成長ができるはずです。そこには偶発的に生まれるイノベーションがあることを忘れてはならないでしょう。(つづく)

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