床屋さんで一番簡単な髪型は何でしょうか?
髪を切りました。
美容師さんに髪を切ってもらっていると、
隣の席に座っている女性がいろいろと注文をしていました。
女性「サイドはもう少し短めがいいの」
美容師「ここをそんなに短くすると、後ろがべたっとしちゃいますよー」
女性「じゃ、前髪を横のほうに流してよ」
美容師「そんなに前髪長くないから無理ですねー」
女性「ならサイドは長めでいいです」
美容師「全体にゆるめのパーマかけてボリューム出せばいけそうですよ」
女性「あら。そうしようかしら。」
と、いうような会話でした。さりげなくカットからパーマにレベルアップしつつも
お客様の要望に応えるために自分の知識・技術をフル活用する、
美容師さんのプロ精神に参りました。
そこで、私を担当してもらっていた美容師さんにちょっと聞いてみました。
自分「実現不可能っぽい髪型を頼まれたことありますか?」
美容師「生えている髪の毛で、頭の上に籠を編むというのが厳しかったです。」
自分「え?やったんですか?」
美容師「やりましたよ。2人がかりで5時間とか。コンテストで入賞しました(写真)」
写真を見ると、武士のように頭のてっぺんを剃りあげて、周りの毛を
編み上げている髪型になっていました。すごすぎです。
自分「じゃ、どんな髪型が一番簡単なんですか?」
美容師「えー。あんまり簡単なのってないですね。スポーツ刈りとかかな。」
自分「坊主頭って楽そうに見えるんですけど。」
美容師「坊主ってのは奥が深いんですよ。(以下坊主についての熱い思い)」
えー、長くなりましたので、簡単にまとめます。
- 人の頭というのは、ボールのようにきれいな形をしていない。
- 傷跡がハゲになっていたり、髪の濃さにムラがあったりする。
- 毛根の向きもバラバラである。
- 額の近くと、もみあげと、てっぺんと、後ろとで、髪の伸びるスピードは違う。
- 坊主頭は髪を短く切るため、それらを調整する余裕が大変少ない。
で、3mmに調整したバリカンで無造作にクリクリ坊主にしたところで、
でこぼこ頭が強調されたり、ハゲが目立ったりするだけだそうです。
さらに1週間も立てば余計にいびつな髪型になってしまうとか。
へこんでいるところは長めに髪を残し、出ているところは短めに刈る。
それでいて全体は真球に近くなるようにしなければならない。
ただ単に真球を目指しても、良く見えるのは2,3日。それではいけない。
少なくともその人の髪の伸び方を把握していないと100点満点の坊主というのは
実現ができない。長持ちする坊主とは、お客様と美容師との信頼関係の象徴でもある。
とのことでした。恐れ入りました。
美容師さんのお仕事ぶりを見ていたら、システム開発の仕事と重なるものがありました。
思えば美容師さんも、実現が難しいヘアスタイルの相談を受けることもあるでしょう。
また、予算も時間も制限がある中で、お客様の髪の特性を考慮しながら
最大の満足へ導いていくというところにも共感を覚えます。
丁寧に話を聞いてもらえますし、こちらから言わなくても
服装や、世間話の内容などからも情報を集めて、できるだけ良い感じに
してくれているのだと思います。
髪はすぐには伸びませんから、「失敗は許されない」という面での厳しさでは
美容師さんのほうが厳しい面があるかもしれません。
残業で遅くなった日に、お客さんがいなくなった美容室でミーティングや
掃除や練習をしている美容師さんと見習いさんを見ると「がんばれー」と思ってしまいます。
自分も「コンピュータでずばっとピュピューンな感じになんないの?」と言われると困ります。
(言われたことないですが)
私もこれから美容室で「キラキラ輝くような男前にしてください」なんて言わないようにします。
(これまでだって一度も言ったことないですが)
一番簡単な髪型、正解は「人それぞれ。少なくとも坊主は難易度が高い。」でした。