ノートPCのバッテリーのエネルギー
ITコンシェルジュの Try ! & Error ?で川上さんがモバイル用の
補助バッテリーを購入されたという話をしておられました。
Get Power Plus
http://www.arvel.co.jp/supply/ada/adapter/agp03nbpn.html
からサイトのスペックを調べてみると、
放電容量が4800mAh (10.8V時) とあります。
細かい話は抜きにしてエネルギーに換算すると以下の通り。
4800 * 10.8 * 3.6 = 186624 ≒ 185kJ
これはどれくらいの量なのでしょうか。
ちょうど良い具合にWikipediaに数量の比較 (エネルギー)という
項目がありますのでこちらを中心に見ていきます。
小さなところではトップクオークの静止エネルギーというのが
ありますが、まったく意味不明なので割愛します。
- 飛んでいる蚊の運動エネルギー は160 nJです。
羽音はうるさいですが、蚊は質量が小さいので運動エネルギーがすごく小さいです。
ノートPCの補助バッテリで10の12乗匹の蚊を浮かすことができます。 - BB弾を使用するモデルガンの威力の上限は989mJで約1Jです。
理想的な電動モデルガンがあれば、ノートPCのバッテリで
185,000発のBB弾を発射することができます。 - 日本の警察官の拳銃の実弾のエネルギーは350 Jです。
バッテリのエネルギーをフル活用すれば、
10グラムの弾を500発ほど撃てます。 - 地球の軌道上の1平方メートルに1秒あたりに太陽から届くエネルギーは1.36 kJです。
大気による吸収などがない場所に変換効率が100%の太陽電池を置けば
2分強で充電1回分のエネルギーが得られます。
このあたりから、もう少し身近なものに例えてみます。
- 1グラムの砂糖や蛋白質の代謝エネルギーは17 kJです。
すると、砂糖10グラムを完全に消化するとバッテリー分のエネルギー……。
コーヒーのスティックシュガーが3,4本で足りるんですね。 - 1グラムの脂肪の代謝エネルギーは38 KJです。
じゃ、スーパーの精肉コーナーの牛脂を5グラムもらってくればいいのか。 - 1グラムのガソリンを燃焼させたときに放出されるエネルギーは50 kJです。
ガソリンなら3グラム用意すればいいことになります。
これはスジャータなどのコーヒーミルクと同じくらいの量です。
少なく感じますが、手のひらで燃やせば確実に病院送りになる量です。
ノートPCのパームレストで低温やけどする理由もわかる気がします。 - 100gの牛乳から得られる熱量は280 kJです。
計算すると、60gで事足りることになります。
ドリフの牛乳一気飲みコントの凄さを感じます。
ちなみにあれって白いコップを使うことで
大量の牛乳を飲んでいるように演出していたのですね。今知りました。 - 100gの鶏卵から得られる熱量は632 kJです。
鶏卵のサイズは規格化されています。
Sサイズだと50グラム前後ですので約300 kJです。
半分に切ったゆで卵を理想的に消化すると150 kJです。
もう追い抜かれてしまいました。スタバでノートPCを使いながら
キャラメル何とか系を飲むのが好きな人はコンセントをコップに沈めたほうが良いですね。
- 100gの精白米から得られる熱量は1.49 MJです。
炊くと200g強になる量ですね。大き目のお茶碗にしっかり盛ったくらいです。
これが補助バッテリー9個分のエネルギーを持っているのですね。 - 激しい労働をしない男性の1日の摂取カロリーの推奨値は2000 kcal = 8.4 MJです。
カロリーメイトのかわりにバッテリーを摂取して生きるとすると、
バッテリーを1日に45個消費しないといけません。
運動会でビデオカメラを回しっぱなしのお父さんでも
そんなに忙しくバッテリー交換をしないでしょう。 - ヤシマ作戦で使用したエネルギーは1億8000万kWを20秒間使ったものでした。
100万kW時 = 3.6 * 10 ^12 J = 3.6 TJになります。
バッテリーが200億個揃ってやっとラミエルを撃ち抜けるんですね。
2発撃たないといけないから400億個ですか。
そういうわけで、食べ物と比較して考えるとやはり
生物の仕組みの巧妙さには驚かされます。
数十億年かけて進化してきた生物と比べて、
ボルタが電池を作ったのが200年前ですので勝ち目の無い戦いですね。
途中、太陽からやってくるエネルギーは?という値がありました。
我々が口にする食べ物は、ほとんどが太陽の恵みによるものです。
魚が食べる植物プランクトンも、野菜も、豚や牛が食べる穀物も
光合成により支えられています。
マッシュアップというのはこういうことなのかもしれません。
太陽から光の形でやってくるエネルギーは、糖や脂質の分子内に
閉じ込められます。動物はそれらのエネルギーを消化によって
都合の良い形で取り出していることになります。
ノートパソコンのバッテリーのエネルギーも、昔地球に降り注いだ光が
石油や石炭の形で保存されていたものです。
最近になって人類が使っただけで、太陽から来たことには変わりません。
バッテリー爆発事件では、高容量化の欠点が現れました。
バッテリーはエネルギーの塊です。バッテリーに故障が発生し、
じわじわと取り出すはずのエネルギーが短い時間で一気に放出されたら
爆発を起こしても何ら不思議ではありません。
数ミリリットルのガソリンに火をつけるのと変わりないことです。
(※ バッテリの素材そのものが燃えやすいと容量以上の被害が出ます)
エネルギーの高容量化を極端に追求した物質は爆弾です。
身近なものが爆弾になるという話は少し昔のインターネットでは
人気のある話でした。高校の化学の実験でも、砂糖に濃硫酸を混ぜるという
実験がありました。爆弾ほどではないですが、熱と煙がすごかったことを
覚えています。あれは、ノートPCのバッテリー爆発事故と同じです。
普段は体の中でじわじわ使うので何の害もないと思われる砂糖ですが、
その化学エネルギーを短い時間で放出させるとやはり危ないのです。
昔、エネルギーをたくさん使いたい、という欲望から爆薬が生まれました。
取り扱いの危険さを克服したのは、ダイナマイトを発明したノーベルです。
戦争のための爆薬の研究は昔ほど盛んではないと思われますが、
代わりに電気エネルギーをバッテリーに安全に詰め込む競争は続いています。
今、人類が太陽以外から得ているエネルギーといえば、
原子力発電です。燃料となるウランは超新星爆発に由来する物質であると
考えられています。また、太陽そのものも同じく星の残骸からできたものです。
自分達が考え、体を動かし、闇を照らし、体を温めるのに必要なエネルギー。
それが何十億年か前の超新星爆発の輝きの名残だと思うと
少し元気がわいてきます。
あとがき:今日は会社のレイアウト変更がありました。
これ以上無理!というほど絡んだLANケーブルを見ていたら
エントロピーを感じましたのでエネルギーに関する投稿をしてみました。
間違いがあったらご指摘下さい。