入金が遅れるお得意先ほど、あやしいもんはない
僕は生まれて初めて取締役になった。
88年10月、社長の西やんから見せてもらったのは資金繰り表だった。
会社にはいつも資金があるわけではない。ていうか、この株式会社リョーマは粗利益率10%の運転免許合宿の取次斡旋が主業だったのでお金の出入は激しいことは知っていた。
その表には、ロータス123で細かく売上の入金の目処と約束している支払いや家賃などの事業資金の入り繰りの予定が記載してあった。
へえぇ、だから【資金繰り】かいな。ずいぶん生々しいコトバやなぁ・・
「かなりストレートな言葉ですね。社員の手前もあるし、もう少しスマートな表現はないんですか」
「ww しらんなぁ」
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大事なことを、熊さんに教わることが多い。
数あるネタでも、次のは最高だ。 長い間、そしていまでも実践している。
「かとちゃん、(経営者として最優先最重要の)給与は20日締めの5日払にしたほうがいいよ。その時期が一番会社にお金がある時だからね。」
「会社って入金も支払も家賃も月末に集中するでしょ。その直前の25日に給料払っちゃうと、原価や家賃の支払いがきつくなることがある。お得意からの入金を待って原価支払、とすると、その入金が遅れたら、連鎖遅延しちゃうし」
「なるほど。合理」
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入金が遅れるお得意先を、特に注視していた。
これほど、あやしいもんはない。早々に 逃げるが勝ち ということだ。
事前に資金難で遅れを連絡してくるところはまだマシ。危ないのは 間違えた、と言い訳するところだ。僕は100%嘘だと断定してた。
口座情報の入力間違いや請求書未着の言い訳。
酷いのになると、「一桁見誤った」とか言って、800万のところを80万しか振り込んでこない。
20年近く商売をしてたけど、70万のところを700万振り込んできた会社は皆無だが、一桁少なく間違えて・・・間もなく潰れた会社は2社ほど思い当たる ww。
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お得意から回収出来ようが出来まいが、媒体社への期日払は絶対だ。
『信用が全て』。 狭い広告業界で、媒体費支払い遅延の噂が立てば商売は潰える。
2回以上入金日が遅延した場合は、自動的に帝国データバンクに調査依頼するフローにしていた。先が東証一部上場企業であっても、設立間もない会社であっても同様の対応だった。
ごく稀に「二、三日遅れたぐらいでナニが悪い」などと開き直る取引先が出るが、これはデッドボール。即、永遠に取引を停止すべきだろう。
如何にイケてる会社を見つけるか よりも、イケてない会社を得意先にしない力の方が十倍大事。
広告の商いは売上の殆どが仕入原価(80-85%)。お取引先が潰れて1000万円を回収出来なきゃ、別の御得意に1億売っても埋められない。
だからこそ、社内の雰囲気、幹部社員の去就、担当者の変更、などの状況の変化のたびに取引額の上限やサイト条件を見直していた。この兆しを管理職は視る。ミスると回収が危うくなるのだ。
キャンブルの鉄則と同じだな。 『勝つことより、負けないこと』