VMAsに学ぶイベントのソーシャル化
8月28日にロサンゼルスのノキア・シアターで「MTV ビデオ・ミュージック・アワード(VMAs)」が開催されました。
Video Of The Yearを含む3部門をKaty Perryが獲得し、Best Female Videoを受賞したLadyGagaが男装して現れました(さすが!)。また、このイベントの中でBeyonceが妊娠を発表し、27歳で死去した故Amy Winehouseへのトリビュートも行われたようです。
YouTube: Katy Perry - Firework
このVMAsという1つのお祭り的イベントのサイトが非常にソーシャル化されたものでした。特徴的なものが以下のコンテンツです。
【BUZZ】
ここでは、ソーシャル上でどのアーティストについて多く語られているかが可視化されています。
【PAPARAZZI】
パパラッチというネーミングのとおり、会場に来たアーティストの写真がアップされ、アクセスが多い順に並んでいます。アーティストの今が見れるわけです。
【HOT SEAT】
これは面白いですね。バーチャルな会場が表示され、白いアイコンはアーティストが座っていることを表しています。特定のアイコンをクリックすると、そのアーティストがどんなTweetをしているのか表示される仕様になっています。
例えばこれがJustin Bieber。自分が会場にいて“どこに誰が座ってるのかなぁ?”と探す疑似体験をさせてくれるかのようです。
もちろんそこからフォローが出来る遷移になっています。
凄いですね。家に居ながらにして自分も一緒に参加しているという感覚を与えてくれる。イベントという“場”の共有がこのサイトにはデザインされています。その結果、私たちにとってこのイベントは“VMAsが行われました”という「ニュース」ではなく、“疑似的に参加した”という「体験」になります。
まさに今行われているイベントの場をリアルな感覚をもって共有する。テレビの画面で見ていたものをより深い体験として共有する。「ニュース」として見たのではなく「体験」したからこそ人は言葉を発し、語ります。ソーシャルでもイベントについて多く語られ、バイラルしていきます。象徴的なのが、イベント内で発表された“Beyonce妊娠”に対する瞬間Tweet数が世界新記録を記録したことです。
このインフォグラフィックはイベント時のソーシャルでの盛り上がりが可視化されています。ツイートの6割を女性が占めており、ツイートの8割がポジティブな内容であったようです。テレビ放送のタイミングで一気に盛り上がっているあたりを見ても、イベントがリアルタイムで共有されたことがわかります。
ソーシャルの本質はコミュニケーションです。その昔、たき火を囲んで人が集まり(=コミュニティ)、そこで自然発生した会話こそがコミュニケーションという言葉の起源だという話を聞いたことが有ります。同じ火を囲んで、参加することこそがコミュニケーションなんですね。
VMAsというたき火の周りにリアルに集まれる人数は限られているけれど、ソーシャルを通じて多くの人に参加してもらう。そしてコミュニケーションが発生する。アーティスト、ファン関係なく、そこで発生した言葉はたき火を囲む皆で共有される。そんなコミュニケーションデザインがVMAsにはありました。音楽業界全体は場のビジネスに移行していくことは明白です。その時に、オンラインでも場を共有させるコミュニケーションデザインとして1つのお手本になるでしょう。
また同時に、VMAsを見ているとこういったイベントがファンのために行われているのだということを凄く感じます。ファンのためという意識無しには、こうしたコミュニケーションのデザインは出来ないのではないでしょうか。日本ではまだまだ、賞やイベント自体がアーティスト自身やプロダクション、レコード会社のためにあるような気がしてなりません。
Onlineでのアーティスト活動を讃えるMTV O Music Awardsでは今後、アーティストの活動を讃える賞自体をユーザーが作り、ユーザーがノミネートアーティストを決め、ユーザーが投票して受賞者を決めるというようにするようです。
その“場”はファンのためにあるのか?そしてオンラインとオフラインを含めたコミュニケーションデザインがされているのか?この二つがソーシャル時代のイベントの価値を決めていくのだなぁと、そんな風に思いました。