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国内外のアーティストやタレントのソーシャルメディア活用術をプロダクション出身の筆者が発信。

Beyoncéに学ぶ動画を通じたコミュニケーション

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今回は世界の歌姫こと“Beyoncé”です。彼女はYouTubeとVEVOでオフィシャルのチャンネルをもっていますが、いずれも動画あたりの平均再生回数は1,000万回を超えています。驚くべき数字ですね。

YouTubeチャンネル

 チャンネル登録者数:279,271人
 総動画数:34
 総再生回数:446,590,144回
 動画あたりの再生回数:13,135,004回

VEVOチャンネル

 チャンネル登録者数:286,497人
 総動画数:67
 総再生回数:829,582,738回
 動画あたりの再生回数:12,381,831回

Facebookページ

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 ※いずれも2011/8/16日時点


前回Lady Gagaを取り上げた際に、“映像によるビジュアルイメージの浸透”が非常に重要になっていると書きました。音楽は、友達から借りたCDで共有されるものではなく、ブログやSNSに貼付けられた動画で共有されるものとなりました。音楽は“聴く”以上に“見る”ものとなり、アーティストは楽曲と共に視覚的な“イメージ”を売らなければいけない時代になりました。

多くのアーティストはYouTubeにチャンネルを設置し、MusiciVideoやメイキング動画をUPしています。Beyoncéもしかりです。彼女も映像を効果的に活用した“イメージ”の発信と、映像をフックにしたコミュニケーションを行っています。


1 Music Videoでブランドを伝える

2008年にリリースされた『Single Ladies』のMusic Videoはとても印象的なものなので、覚えている方も多いでしょう。


彼女の価値(バリュー)って何だろうと考えると、歌唱力はもちろん、圧倒的にセクシーなプロポーションでありダンスですよね。このMusicVideoはまさにそのバリューを伝えてくれるものです。YouTube上では、一般ユーザーによる『踊ってみた動画』が多数UPされました。もちろん、好きじゃないとわざわざ振りを覚えて動画をUPしませんから、『踊ってみた動画』はファンによる一種の“ロイヤルティの表現”でもあると思います。その意味でこのVideoは効果的にバイラルしたと言えるでしょう。

当たり前なんですが、その動画はアーティストのバリューを伝えているのか?という点は大切なポイントです。インパクトがありバイラル性をもつ動画でありながら、且つアーティストのオリジナルなバリューを伝えるものになっているのは素晴らしいですね。

2 Music Videoの背景にあるストーリーを話す

今年4月にリリースされた「Run The World (Girls)」のMusic Videoでは、エチオピアのダンサーが起用されています。彼らは世間的には無名な存在だったのですが、自分たちでYouTubeにダンス動画をUPしており、それを見つけたBeyoncéが(恐らく見つけたのはスタッフだと思いますが)呼び寄せたそうです。Beyoncé 本人も「YouTubeの動画を見て一目惚れしたわ!」ということをインタビュー動画で語っています。

Lady Gagaしかりですが、クリエイティブにおいて自分専用の固定チームを組むよりも、作品毎に最先端のデザイナーやプロデューサー等を取り入れてチームを組織することが今の流れですね。その中に、ダンサーとしてYouTubeで発掘した世間的には無名のエチオピア人を起用したというストーリーが入ることは、コミュニケーションのネタとして効果的に利いているように思えます。本人が呼び寄せたということで、ダンスへのこだわりを持っているという印象づけも出来ます。


YouTube: Beyoncé - Run The World (Girls)

当のエチオピアのダンサーは、呼ばれてMusicVideo撮影に参加したのですが、Beyoncé のことを知らなかったというエピソードもまた面白いですね。

3 Music Videoにファンを参加させる

Beyoncé を含め、動画コンテストを開催するケースが増えています。ファンにとって動画投稿はロイヤルティの表現でもあるので、もしアーティスト本人に公認をもらえればそれほど嬉しいことはないですよね。ファンからの愛情表現に対してアーティストが答えるという1つのコミュニケーションが成立していると思います。

新曲「Best Thing I Never Had」で行っているのは、正規のMusic Videoとは別に、ユーザー参加型の別バージョンを作るという企画です。楽曲とリンクさせた『幸せあふれる結婚式』と『忘れられない卒業式』をテーマに、一般の方から写真と動画を募集し、それを編集して別バージョンのMusic Videoを作るんですね。自らの写真や映像がオフィシャルのVideoに使用されるかもしれないという期待感は大きいものです。

参加方法は簡単で、動画はYouTubeへ、写真はFlickrへ、いずれも#BeyonceBestThingというタグを付けて投稿すればOK。非常に敷居が低く、参加しやすいものになっています。


YouTube: Beyoncé - Best Thing I Never Had


Beyoncéは動画を通じて、自らのバリューを伝え、コミュニケーションのネタを提供し、またユーザーを作品に参加させるという試みを行っています。こうした試みは、ファンとのエンゲージメントを築くのに貢献するでしょう。ただ、結局曲は売れたの?お金になったの?という疑問は残ります。実際のところ、今年リリースの「Run The World (Girls)」「Best Thing I Never Had」に関してはチャートのTOP10に入ることが出来ず、不発という書かれ方がされているようです。


場のビジネスへ

ここでもう1つ考えたいのは、楽曲を売るというスタンスからの脱却です。楽曲や映像そのものはネット上で共有される存在となり、ユーザーにとって限りなくフリーの存在となりました。この状況では、むしろフリーのコンテンツをソーシャル上でいかに広く見せ、それによってどれだけ『共感という価値』を得るのか、そしてアーティストとしてのブランド力をどう高めていくのかという考え方へのシフトが必要でしょう。

アーティストはある意味「芸人化」しているのかもしれません。芸人は“ネタ”そのものに対価をもらっているわけではなく、面白いネタをもっていることで芸人としての価値を高め、番組出演や営業を通じて対価を得ています。芸人と言えば吉本ですが、
吉本興行の近年の動きって『場』を作ることだと思うのです。つまり、テレビ番組というコントロール出来ない“場”以外に、常設の劇場という『場』をつくり、自前の放送局という『場』つくり、大規模なイベントという『場』を手がけています。


アーティストも同様、『場のビジネス』に移っていくのではと思うのです。マドンナがプロダクションではなくライブ制作会社と契約をしたように、ライブという『場』であり、ファンクラブという『場』がセールスのフィールドとなっていくのではないでしょうか。フリーのコンテンツによって共感という価値を得て、ブランド力が上がったアーティストは『場』で稼ぐ。付随的に、マーチャンであったり、プロデュースであったりというビジネスも発生するはずです。


Beyoncéは、動画を通じたコミュニケーションを行っていますが、これが直接的に曲のセールスに云々という視点で見るのではなく、こうしたコミュニケーションで得た共感という価値、絆、エンゲージメントが、次の『場のビジネス』に繋がっていくのだという視点で見ていくことが大事なんじゃないかと、そう思っています。


おまけ

Single Ladiesのフラッシュモブも、ソーシャル上でのバズを引き起こしました。


YouTube: Flash Mob 100 Girls Dance in Piccadilly Circus to Beyonce Single Ladies


Facebookページリニューアルのご報告

ループスのFacebookページを先日リニューアルオープンしました。早速900名以上の方々にいいね!を押していただき、嬉しく思っています。


日本語の「ループス」も含めたページ名にしたこと、これまで未対応だったチェックイン機能のスポットに対応したこと、主にこれら2点を旧ページ「Looops」から改善しています。



この新ページ限定のコンテンツ・最新情報も発信していく予定です。引き続き応援いただければと思います。

 
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