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不確実性の中での戦略立案

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コンサルティング、それも事業戦略や新規事業計画を専門としている身として常に感じる矛盾ですが、「戦略」や「計画」が想定通りに機能することは少ないことが事実です。戦略も計画も、その時点で予測した将来に対して、現時点で取りうる最良の策を論理的に導き出してるため、将来の不確実性の下では当然のことながら戦略、計画が想定から異なる結果を生んでしまいます。

中には、「戦略どおりに上手くことが運んだ」というケースもあると思いますが、その経緯を見ていると偶然に力を借りていたり、結果は想定どおりなのであるが経緯が全く異なっているケースなどが殆どだと思います。

この不確実な未来に対する戦略と計画の立案は、事業を行っている限り必然的につきまといますし、不確実な中でより的確な戦略とオプションを決定していく作業はどうしてもマネージメントには必要な作業になります。

殆どの戦略本が過去の成功、失敗を結果論として語っていることに対しても、常に違和感を覚えます。結果として失敗した、成功した、と言う事例をその理由からだけ語っても、戦略をより精度の高いものにすることには殆ど役立たないからです。もしも、過去の経験から、戦略の精度を高めることができるのであれば経営はもっと簡単ですし、殆どの企業が成功し、つぶれる会社は殆ど存在しえなくなります。

このような、経営における戦略の矛盾を、実に客観的に語った本として「戦略のパラドックス」があります。特にSONYのベータマックス、MD、DATの失敗に関して、他の戦略本で語られているような結果論だけでなく、経営陣がおかれた立場、その時点の意思決定の条件等を含め、非常に客観的に戦略が本来持つ矛盾を記述するとともに、不確実性を持つ戦略論と、その実行レベルのマネージメントを効率的に行うための様々なアプローチを記述しています。

若干難しく、冗長な部分があるものの、世にたくさん出ている戦略論の本を読む前に、戦略の本質を理解する上でも一読されることをお勧めします。

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