新富裕層による社会変化
アメリカンドリームとは良くいいますが、アメリカの起業家の中にはとてつもないお金持ちがどんどん生まれています。IT関係の起業家に関しては、比較的身近にお話を聞きますが、それ以外の世界でも、一攫千金で大金持ちになる人は昔から存在していて、社会的にもそれを是とする風潮があります。アメリカの富裕層では、単に上場、M&Aでの株の売却などによる富裕層の登場だけでなく、きちんと会社を育て上げてお金持ちになる人もいますし、また代々の資産を大きく増やすことでさらなる大金持ちになる人もいます。
一方日本では、ドットコムバブル時代から一攫千金型でお金持ちになる人も増えましたが、その数や金額に関して考えると、アメリカとの間には明らかに差が存在します。どちらかと言えば、代々の資産家であるか、中規模のお金持ちがたくさん創出される仕組みだと思います。特に大金持ちと言われる資産家の登場には、不動産が絡んでいることが比較的多いと思います。つまり、持っている者が、資産を増やすことで大金持ちになるケースが多いのでしょうか。
どちらにしても、急激にお金持ちが増え、そしてその金額が過去のレベルを上回った結果、アメリカ社会では様々な変化と軋轢が生まれているようです。それを克明に記述した本が「ザ・ニューリッチ」原題は「The Richistan」です。
旧来からのお金持ち社会の生活にいきなり入り込んでくる別のライフスタイルの新しいお金持ち。しかし、そのライフスタイルは異なっても、同じように社会に認められることを旧来の仕組みの中で行おうとすることで、軋轢が生まれるようです。問題を難しくしているのは、旧来であれば、昔からの富裕層(いわゆる”資産”に裏打ちされた層)に属するためには、単なるお金儲けだけでは追いつけないほどの格差があったことに大して、現在では資産規模という意味では旧来の層よりも大きい資産を手にして新たに富裕層に入ってくる人が増えていることで、旧来の秩序を徐々に破壊していることのようです。
このような変化は、経済・政治にも影響を与えているようで、それが改革も含めた良い方向に動くのか、悪い方向に傾くのかはわかりせん。しかし、旧来からの仕組みを崩す可能性を含めたダイナミズムが存在していることがアメリカの社会の持つ一つの力ではないかと思います。
政治の世界を含め、世襲、旧来の仕組みの維持、新参者の排除に固執している日本社会にも、”新しいお金持ち層”が登場し、社会構造に揺さぶりをかける日がくることを期待します。