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戦略、プロモ、広報など実務から見たマーケティングをお話します

説明の場や使われる場面を意識して資料を作る

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仕事で資料作成をする機会は増えていく一方だと思います。数十年前のように、ワープロ自体が普及しておらず、コピー機も潤沢に無い時代には、資料を作成できる量もそうですが、資料が活用される場面も限定的でした。さらに、資料の枚数も、意識的というよりも物理的に少なくせざるを得なかったので、資料の内容としては密度の濃いものを作成せざるを得なかった時代もあります。

しかし、今ではワードやパワーポイントで簡単に資料を作成でき、コピーも簡単に取れますし、なによりも電子媒体として回送が容易にできる時代となり、その結果として資料はあふれかえるだけでなく、そこに輪をかけるように新しい資料を日産しています。

単純に事実としての情報をまとめるだけ、または他人のお話を筆記しているだけの資料であれば、資料作成の責任自体はあまりありませんが、通常の資料ではそうは行きません。資料は、個人や会社の意見として説明に使われたり、交渉現場で説得のために活用されたり、知らないところで参考資料として意思決定の根拠に使われたりしています。一方で資料を次々に作り続けながら、中味の及ぼす影響はどんどん大きくなっていく、つまり資料作成の責任はどんどん重くなってきています。

そのような状況下で、個人の資料でなく、使用されることがわかっている資料を作成するときに、個人としてとりあえず解かったことをまとめるだけでは不十分です。資料は、必ず使われる場面を意識して作成することが、重要になってきます。説明や交渉では、説明シナリオ、交渉シナリオを意識してシナリオ内の強弱にあわせて資料の強弱さらには口頭の内容を補強する資料を追加したりします。さらに高度になると説明相手、交渉相手に突っ込ませるところを設定し、時間配分や、相手の言い分を吸収するためのポイントを作っておいたりします。

また、コンサルティングの仕事をしている場合に特に気をつけることは、資料だけが一人歩きした場合に誤解を生まないように工夫することです。単なるプレゼンテーションの資料であれば、細かい説明は不要ですし、資料に書いてしまうことでプレゼンテーションの価値を低くしてしまいますが、報告等の提出資料やディスカッション用資料では、出来る限り誤解の発生しないように資料に詳細を記述しておきます(あまり多いとうるさいですが)。またアプローチや資料の構造の説明なども追加して、資料として読んだ場合に、どのように論旨が組み立てられているかを明示的に資料に追加します。

このように、資料を作成する場合には、やっつけ仕事ではなく、どこでどのように活用されるかを意識して、それにあわせた資料作りをすることが必要だと思います。よく、当日にならないと資料が提示できない、内容が説明できない状態がありますが、説明をどのように行っていくか、使うシーンでの資料を離れた論理構成が明確に定義できていれば、細部は出来ていなくても資料としては、確認に耐えうる内容のものができていて当然だと思います。資料を作ることが目的となっている場合には、そうなりませんし、特に資料作成が、打合せの説明者や当事者とまったく独立している場合には、使われるシーンと資料の乖離は激しくなります。

資料を作成することは、単なるタスクではなく、ある交渉、説明目的を果たすための重要な要素であることを再認識して、入念な準備を行うべきだと思います。

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