マーケティングに必要な「情熱」と「冷静さ」
マーケティングや広報の仕事をしていると、「自分達の製品(サービスや事業そのものの場合もありますが)はこんなによい」だから「きっかけがあればお客さまが注目する」または「みんな興味を持つはずだ」という考えでプラニングに臨む方が結構いらっしゃいます。確かに自信を持つことは必要です。自社の製品やサービス、そして経営方針が正しいかどうか疑心暗鬼では仕事として発展しないと思います。
しかし、その一方で、ものすごい技術的アドバンテージ、または差別化要素が無い場合には、自社で考えるほど世間や市場からは注目されないものです。このギャップを埋める、つまり製品やサービスに注目を集め、出来る限り商談への確率を高めることがマーケティングの仕事になるのですが、このギャップは非常に大きいものです。
当然冷静にかつ客観的に、市場の状況、顧客の興味、競合の状態、製品やサービスの本質的な差別化可能要素といったものを分析しますが、、「自分達の製品はこんなによい」というはじめのスタンスを変えることが出来ずに、その分析結果を素直に一度受入れることができない人が多いことも事実です。自らの限定された経験でのお客さまの反応、限られた市場や競合知識をベースにして反論を加えるならまだしも、感情的になって事実を否定する人もいます。
ビジネスを行う際には、必ず自分の側からのものの見方だけでなく、お客さま、競合と様々な角度から物の見え方を分析する必要があり、その行為を客観的に行うためには一度自社の製品への思い入れを排除する必要があります。
この冷静さを持ったマーケティングおよび経営陣が少ないことが、いわゆる大手ゼネコン型IT企業以外から突出したIT企業がなかなか生まれない原因ではないかと思います。お客さまや市場に対して熱く自社製品やサービスをプロモーションすることと、冷静に状況を分析する客観性、その2つを併せ持った人物はますます貴重になっていくと思います。