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ゼネコンの現場力の低下、ITサービスの現場力の低下

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日経ビジネスの8月20日号のトップストーリーに「製造現場の縮図ゼネコン 現場力を取り戻せ」という特集記事が載っていました。元請から第x次の下請まで、重層構造を織り成しているゼネコンで、価格競争、現場運営力の低下、さらには職人の高齢化など、様々な問題が発生しています。これを”製造業の縮図”として扱っていましたが、製造業だけでなくシステム・インテグレーションを含むITサービスにも同様なことが言えると思います。

まず、ゼネコンで言う設計と建設現場の乖離ですが、設計や構造計算はコンピュータの力を借りて、現場感による施行品質の向上や、工事効率の向上などまで考える意識が薄れ、最終的なものづくりの現場との乖離が始まっているようです。昔ゼネコン関係者の方に聞いたところですと、設計図面に対して施行図面というものがあるそうですが、そこで実際に工事をするために効率よい方法をとろうとするため、無駄なコンクリート打ちをしてしまい、かえって建物の強度に影響を及ぼしたりする例もあるそうです。これと同じように、要件定義や基本アーキテクチャーの設計が、実際に使われる業務やシステム構築での無理につながっていることも散見します。

次に、現場力の低下ですが、これはゼネコンの管理者の能力低下を指しているようですが、システム構築のプロジェクトにおけるプロジェクト管理と全く同じ状態のようです。施行管理者の技術・経験不足によって、工程管理、安全、品質など様々なところで予定超過、内容レベルの低下が起こっている建設現場と同じで、とおり一編のプロジェクト管理方法論に則り、少ない経験を正として管理を行うために、結局そのプロジェクトに最適な方法どころか、無駄・無理を生じさせる管理を実施することはよくあります。殆ど場合は、ここで火を噴くプロジェクトになります。

また、職人の高齢化は、ITでは別の形で発生します。職人自体がいない状況です。プログラマーはいますが、様々な分野で専門能力を発揮することを期待される職人的な人材が不足しており、またそのような専門家を育てる構図になっていないため、廉価なプログラマーはいても、多少値がはっても頼りになる専門家は払底しているのが現状です。

結局のところ、あるビジネスのスキームが維持・発展していくためには、ある程度の資金還流が必要で、その原資をもとに継ぎ目の無い人材の育成が行われる必要があります。建築業と比較して比較的歴史の浅いITサービスでは、(比較的)ゆっくりと具現化してきている建設現場の力の低下と比較して、急激に管理・構築能力の低下が発生していると思います。特に大手ではもっと現場の仕事をさせること、つまり下請けと同じ仕事を自らもすることで、社員の管理能力や現場力を鍛えることが今後の凋落を防ぐ唯一の術となるのではと思います。

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