レイオフ 恐怖による生産性低下
昔IBMに勤務していた時、偶然に海外との仕事が中心で、海外の開発や生産の人達と打合せでミーティングをよく行っている頃に、ちょうどIBM初の人員削減(いわゆるレイオフ)が始まりました。
営業部門などに比べると、開発や生産の人達は、住んでいる場所もかなり田舎であり、土地によってはIBMが一番大きい企業で、それ以外は殆どなにも無いという場所もありました。そんな中でレイオフを行う発表が度々行われ、私が一緒に仕事をしていた人達も様々な反応を見せていました。
ある程度勤続年数が長い人は、割り増しの手当を含め、アーリー(そんなに早くは無いですが)リタイアメントを決めつけ、受け流すように反応していましたが、ちょうど今の私と同じように40台初めの人達は、いつ自分が首を切られるか戦々恐々としていました(よく食事をしたり、社内でのメールでお話を聞かされましたが、上手く対応できなかったことが今でも残念ですが)。
その時期に仕事をしていて思いましたが、レイオフが発表され、それが度重なり、実行期間が長くなることで、組織の生産性が異常に低下します。私の経験の範囲では、仕事の割り振り、責任感、リードタイム、対応レベルどれをとっても、明らかに低下していました。通常であれば自らの結果をアピールするために、皆が一生懸命仕事をし、今までより生産性が上がりそうな気がしますが、現実のところは仕事どころではないというような状況が続いていました(IBMがかなり激しいレイオフの状態だったことも事実です)。
今冷静に考えると、一度レイオフがあり、1回限りで長期間安定するということが確約されない状況が続くこと、さらにはレイオフの対象者を段階的に通知することで、従業員の疑心暗鬼は最高潮に達します。その結果、生産性は著しく低下します。IBMでも、「トイレに行く回数がモニターされていて、レイオフの対象者とする条件に加えられている」という噂が流れ、本人達は冗談だろうと思いながらも、何故かまじめに対応していました。
レイオフや解雇は辛い選択です。特に経営者だけでなく、対象を選定し通知する担当者にとっては、ことさら大変な仕事ですし、対象になった人もそれ以上に辛い状況に置かれます。しかし、必要となってしまった場合には、レイオフや解雇をしなくてはなりませんし、それを否定はできません。その場合には、決定→発表→実行までを素早く実施することが、会社を立て直すためには必要だと肌で感じた一瞬でした。