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ベンチャー企業の成長について、現場で思うこと

成功の瞬間

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「なぜ起業家に運と直感が不可欠なのか」というサブタイトルに引かれて、一気に読了しました。
成功の瞬間(主藤孝司著、講談社)

経営の勉強をすればするほど起業には失敗してしまう。必要なのは勉強ではなく、「偶然と直感を敏感に感じ取りすべてを受け入れる素直な生き方」の心得を知ることにある。(12ページ)
起業するには、まず勉強が必要だと思っている人が殆どです。しかし、必要な勉強は経営(学)の勉強ではありません。経営の勉強をして成功した人もいますが、十分条件ではありません。経営学が教えるのは、うまくいく方法だけであって、うまくいかない時にどうすればいいかは、あまり教えてくれません。そして、うまくいく方法は、なかなか出来ない方法だったりします。従って、勉強すればするほど起業できなくなってしまいます。何らかの社会的使命を感じ、やむにやまれず起業した人の方が意外と成功します。使命感こそが、うまくいかない状況と向き合い打開していくパワーを生み出します。
予想しないで起こる偶然の出来事にこそ、チャンスが隠れている。人との偶然の出会いこそ、成功のきっかけになることが多い。(36ページ)
成長の起点となる出来事は、ほとんどの場合が偶然が生み出したものです。特に人との出会いは、見えていなかった可能性を大きく広げてくれることがあります。
起業家は経営者と違って「ひらめき」に長けていればそれで良い。発想のかたまりが起業家である。当然、それだけでは事業にならないから、それを事業へと落とし込んでいく経営者も企業の運営には必要となる。単なる起業家の「思いつき」を、経営者の力でルールと常識を社内に備えていくことで事業を成立させていく(58ページ)
よく言われるCEOとCOOの役割分担に近い内容です。ベンチャー企業の成長にとっても重要なポイントで、両方をやらせてしまっては、共倒れになってしまいます。マネジメントを起業家に強要すると、魂を腐らせてしまうことになります。
ファーストステップは、独断専行のステージであるから、スピードを重視してより多くの行動を行うことが求められる。だが問題は、この段階にある大半の人が、知識を求めすぎてしまうことだ。(中略)失敗がまだ許される段階なので、考えるよりも自分の直感を信じて行動したほうが実を結ぶ可能性が高い(70ページ)
わからない世界では、スピーディーな仮説検証が重要です。まずはやってみる、わからないからこそやってみて覚えていく姿勢が欠かせないと思います。
すべてを手に入れるな!チャンスは「パス」したほうが成功する。(154ページ)
目標を設定しない思考法がよい結果を生む(164ページ)
いづれも逆説的な表現ですが、本当のチャンスは見えにくいので、「来た~」と思った瞬間は要注意です。パスするくらいのゆとりが必要だと思います。目標を設定すると不要な制約が生まれることがありますし、本来実現すべき価値を忘れてしまいかねません。
成功している起業家は、虫取りや魚釣りが仲間内で最もうまい傾向が強い(205ページ)
思うままにならない自然の中でこそ、体の感覚は鋭敏になるのだと思います。「におい、風向き、湿度、土の感触、木の色、太陽の位置」などの情報から、直感的に虫の居場所を察知する能力が、起業にも重要なことだと思います。
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