鉄板病
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おちまさとさんの最新作「鉄板病」は、最近の出来事を見る上で大変参考になりました。
鉄板病とは、「鉄板」(鉄の板。その堅さから転じて、手堅い、ハズレがない、間違いがないこと)なものだけを求め、「鉄板」でいたいと過度に欲する病気。初期症状として、常に正解ゾーンにいたい、人の考えを鵜呑みにする、損に敏感、記憶を喪失する、などが見られる。と著者自身で定義づけられています。「ハズさない」「失敗しない」が合言葉になっている「鉄板ブーム」だと今の日本を捉えられています。
例えば、「レストランを決めるとき、グルメサイトのレビューを読む」という完璧志向(ハズさないように求めれば求めるほど、より一層ハズさないでいることが難しくなる)、「チーズフォンデュはおしゃれだと思う」という思考停止状態、「「どんだけ~!」を日常的に使っている」という分かったつもりになっている状態などを鉄板病とされています。
給食費を払わない親に関しても、
「払う?払わない?どっち?」と周りをキョロキョロ見回して、払わない人がぽつぽついるのを認めた途端、「払ったら損しちゃうじゃん!」と結論づけるのです。周りできちんと払っている親御さんのことはまるっきり無視します。払っていない人、自分より得をしている(かもしれない)人しか視野に入ってこないのです。(81ページ)
という明解な説明で、
給食費を払わない親たちにとって、正義は自分にあります。本人にとっては、損をしないための選択なのですから、完璧に正しいのです。ですから、自分の行為の正当性明確にさせるために、きっちりと理論武装します。「そもそも義務教育というのはですね」なんてことを滔々と語ったりします。(中略)つまり、払わずゴネていれば給食が出てきて「お得」だ、という形になってしまっています。(82ページ)
というユニークな現状認識をされています。給食費を払わない親の理屈がどうも理解できなかったのですが、この説明には一理あるな、と思いました。
「ゴネれば得」というところから始まった鉄板病的志向は、「ゴメないと損」という形にエスカレートし、さらには「ゴネるのがカッコイイ!」にまで変容していってしまいます。(84ページ)
また、小泉劇場に関しても、
小泉劇場が悪いのではなくて、それを嬉々として全面的に受け入れてしまった日本人に問題があったのです。(147ページ)
として、「断定的に言い切る人が好き」という傾向があった(146ページ)ことを挙げています。
次に、画一的な思考に陥りやすい鉄板病の治療法として、「イマジネーションを大事にするというスタンスが必要」(183ページ)とされています。また、一人の小ささに無力感を感じることなく、「ひとりの「やってみるかな」という行動は、連鎖したときにはとても大きな影響を与える」(193ページ)として、第一声を上げることの重要性を説いています。
最後に、
鉄板も大事だけど、挑戦もアリ。どっちもアリ、でいいんじゃないでしょうか?そういう文化でいいんじゃないかな、と思うのです。(219ページ)
という言葉で締めくくられています。鉄板病から遠いところにいるには、「志を高く持つ」ことが必要だと強調されいます。
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