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ベンチャー企業の成長について、現場で思うこと

働きたい人は、お金を払ってください

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ネットの世界では、コミュニケーションにかかるリーチコストがタダ同然になったため、コンテンツホルダーの「権利侵害」が多発しています。供給者から消費者へのパワーシフトは止められない流れですし、持たざる者とシェアするという思想は決して悪いものではありません。オープンソースの思想は、そういう権利主張をしないパラダイムシフトだと思います。それにより、協働作業が潤滑に進むというメリットがあります。何よりも、社会全体から見て非常に有意義です。

そういうパラダイムシフトを労働というものにも当てはめてみてどうでしょうか?従来は、お金(生活の原資)を得るために、意思とは関係なく(仕方なく)働いてきました。労働組合は、労働者の給料の上昇(賃上げ)と労働時間の短縮(時短)を目指して活動していましたし、労働に対する正当な対価が保障されるべきだという考えが常識でした。

そこにパラダイムシフトを持ち込むと、「お金を払って働かせてもらう」ということになります。ボランティアなど無償の奉仕まではありましたが、働かせてもらうにはお金を払う必要がある、というものです。一見、滑稽にも思えますが、最近流行っている農業体験などの体験教室などは、そういう発想に基づくものだと思います。農作業自体は労働ですが、作物が出来る喜び、作った野菜を食べてもらえる喜びを得るために、お金を払って農地を借りたり、一日体験をさせてもらえます。

分かりやすいところでは、自費出版。プロの作家は原稿料を労働の対価として貰いますが、自費出版は自分の本が出る喜びを得るために、お金を払って原稿を書き上げます。プロとアマの違いといえば、それまでですが、そういうアマチュアリズムが今後のビジネスのポイントになると思います。

聞いた話では、カラオケに熱心な中高年向けに、自分が歌うCD(1,000枚)を作るサービス(ジャケット撮影などあり)を100万円で提供していますが、年間数千人の利用があるそうです。2007年問題で話題になった団塊世代は時間があり、長い人生の中で蓄えた知見を持っています。そういう人たちが、自らの知見を披露したり、若者に伝えていく場が提供されれば、面白いビジネスになるかもしれません。教えたい人たちが、自らお金を払って、有益な知識を伝えていく。生徒は、大道芸を見るごとく投げ銭していく。ネットの世界なら、地方にいる匠の技が伝承できるかも知れません。

Wikipediaに書き込む動機は何なのかを考えると、今後必ず起こるパラダイムシフトが見えてくると思います。

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