クラウドのTCO評価
クラウドでコスト削減は、まさにマーケのお決まりメッセージですが、もうすこし具体的に考えられないかなと思い、TCO評価でお試し思考をしてみました。
ITコスト全体の代表指標が、総所有コストのTCO(Total Cost of Ownership)ですが、もともとはガートナーが90年代に言い出したもののようです。要は見えないコストなども含めてコストを時間軸も捕らえて把握しようという訳です。で、その具体的な内訳というとシンプルに定まったものがみつからないので、ガートナーのレポートなどから引っ張ってきました。
① ハードウェア/ソフトウェアの購入と保守
② システム運用・管理
③ ユーザーサポート
④ 開発
⑤ ネットワークなど共通インフラ
⑥ ユーザーのピア/セルフサポートと開発
⑦ ダウンタイム
①から⑤までが直接的な費用で、⑥と⑦は間接的な費用といえます。で、これをベースに今までのシステムが、どのくらいそれぞれの項目がかかっているかの、データの例を探してみました。アプリケーションによっても違うし、なかなか定まったものはないですが、企業全体では、とても大雑把にですが、⑥が3割前後、①が2割前後、②と③が1割前後、その他は1割以下というのが、業界などで多少の違いはあるものの、ひとつの傾向のようです。
クラウドでどうこれを減らせるか。例えばSaaSでは、①も②も④もすべてユーザー数かなにかのサブスクリプションになるわけで、少なくなりそうです。あとはアプリの使い勝手がよければ、③と⑥でしょうか。いずれにしてもSaaSは、TCOの多くの項目に影響を与えそうで、効果の検討のしがいがあるでしょう。
パブリックのPaaSやIaaSはでうでしょう。①と②が同様にサブスクリプションになって、計3割を超えるところだけに、効果を期待したいところです。あとはPaaSでは④がどう変わるのかと、開発の変化に検討が必要でしょう。
そしてプライベート・クラウドのPaaSやIaaSですが、①は自前ですから、標準化や自動化で②がどのように効果がでるかがやはり中心になりそうです。上のデータからすると1割前後ですので、きっちり標準化、自動化の効果を出さないといけなそうです。もちろんその標準化と自動化が広く他の項目にどの程度影響を与えるか、例えば標準化によりハードウェアとソフトウェアの調達にもメリットがでるとか、などの評価も必要でしょう。
実際TCO評価をするには、クラウド化を検討しているアプリケーションでのTCOのモデルをまずは作ってみて、利用するクラウドの形態でそれぞれの項目を評価していくのが正攻法でしょうか。一つすぐ気がつくのは、今までTCO評価で集めなければならなかったコストが、パブリックのクラウドでは一気にサブスクリプションという明確な数字になりTCO評価が少し楽になるところはクラウドらしさでしょうか。
あとはコスト、コストと考えると、忘れがちになるのが効果のほうでしょう。同じコストでもどれだけクラウドでメリットが出てくるのか、スピードや品質の変化の評価、そして究極的にはそのアプリでのROI(Return of Investment)など付加価値がどう出てくるかの視点も忘れてはならないポイントでしょう。