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企業の主役はもちろん現場。その現場の社員が心地よく、安心して、そして安全に働ける環境づくりをするのがスタッフの役割。そのスタッフ業務を効率よく進めるために必要な、視点、考え方、テクニック。今の時代に求められているのは、スペシャリストよりプロフェッショナル。多くのプロフェッショナルから得た知見を公開していきます。

「広報」とはコミュニケーション ~ 相手目線のコミュニケーションで良好な関係作りを目指す ~

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広報のことを知っていますか?

「広報というのは、経営そのものだと思わないといけません。」これは、元経団連会長平岩外四氏の言葉です。一般的に、「広報」といった場合に、「知らせる」こと、という意味に捉えることが多いかと思います。しかし、それはあくまでも狭義の広報でしかありません。広義の広報とは、「組織と社会との望ましい関係作り」、そのための考え方であり、行動のことです。

 

組織と社会との望ましい関係づくり

 広義の広報「組織と社会との望ましい関係づくり」。これは、企業とステークホルダーとの間に良好な関係を築くこと、このように言い換えることができます。ステークホルダーとは一般的には、株主、取引先、顧客、地域、行政、そしてそこで働く社員も含みます。これらのステークホルダーとの良好な関係を築き、そして維持していくことが広報そのものなのです。CSRの時代、多くのステークホルダーとの関係作りである広報活動は、CSR活動の根幹をなすものです。

 そのためには、企業とステークホルダーとの相互理解が必要となってきます。各ステークホルダーの状況を理解し、どのように思われているのか、どのような要望があるのかを把握するとともに、経営理念や現在の状況等、企業自身のことも理解してもらう必要があります。つまり、それは企業とステークホルダーとの間で「コミュニケーション」が成立することになるのです。

 

「コミュニケーションとは要求である」

 この言葉はかのドラッガーが記したものです。企業におけるコミュニケーションとは、コミュニケーションをとろうとする者が、その相手になんらかの要求を伝えようとすることを意味しています。先に記したステークホルダー別にその要求を考えてみると、株主に対しては、自社の状況を理解してもらい、株を長期間に渡って保有してもらうことであり、顧客に対しては、自社の商品やサービスを購入、利用してもらうことであります。地域に対しては、自社の状況を理解してもらい、企業活動に協力してもらうことであり、社員に対しては、モチベーションを高く維持してもらい、イノベーションを起こしてもらうことであったりします。

 

そもそも何がしたいのか

 そうした場合に、企業は各ステークホルダーに対して何をして欲しいのか、そのことを明確にしておくことが必要となります。普通それは企業理念などの企業の存在意義を表す言葉が軸となり、そこから派生して要求が明確になっていきます。そして、ステークホルダーは数多く存在しても、顧客と従業員がその中心となっていくかと思います。

 企業自体の思い、存在意義を確固としたものにするには、パートナーや従業員の協力が欠かせません。そしてその成果物である製品や提供サービスを顧客に利用してもらわなければ、企業の存在はあり得ません。この二つのステークホルダーにどうして欲しいのか、そのためには、どのようなコンテンツをどのように伝えていけばいいのかが大切なポイントです。

 

相手目線のコミュニケーション

  「知らせる」ことを狭義の広報と先に記しました。しかし、コミュニケーションを成立させるためには、実は相手のことを知っていることがその前提条件となります。広報業界の言葉でそれは「広聴」と言います。情報の収集、受信です。平たく言えば、相手の状況を知り、理解することです。広報とは、まずはコミュニケートしたい相手のことを知ることが先決となります。相手の状況が把握できれば、それにあったコンテンツを考えることができますし、相手の情報収集作業がイメージできれば、どのようなメディアで情報発信すればいいかが分かるのです。

 

「広報」とはコミュニケーション

 ご家族、友人、そして仕事仲間。良好な関係が築かれている場合、そこには良質なコミュニケーションが成立しているはずです。相手のことも十分理解し、自らのことも理解してもらっている。相手になにかを伝えようとする場合、相手が理解し易いようなコンテンツで、相手に最も届きやすいメディア、手法で届けようとするはずです。それがあるべきコミュニケーションの姿でありますし、それを継続していくことが広報本来の姿だと思います。

 

ステークホルダー別の広報

先に記したステークホルダー。それぞれに対する広報とはいかなるものかを整理します。

ア)  株主に対するもの:インベスターリレーションズ(IR)

企業の業績について株主や機関投資家、証券アナリスト等に開示すること

イ)  顧客、取引先に対するもの:マーケティング・コミュニケーション

商品やサービスをターゲット顧客に告知し認知され、購買に結びつけること

ウ) 地域・行政に対するもの:コミュニティリレーションズ

自社の存在する行政機関、町内会の住民組織等との良好な関係を築くこと

エ) 自社の社員に対するもの:エンプロイーリレーションズ

全社員に自社の状況、目指すべき方向、社員に期待すること等を伝えること

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