教科型学力判定機能は維持の方向で~大学入試改革に国立大学協会が見解表明!
中央教育審議会、高大接続特別部会(第18回)にて、国立大学協会が、「今後の国立大学の入学者選抜の改革の方向について」の説明を行いました。
ここで発表された資料、昨年秋ごろから加速度的に進められてきた大学入試改革の流れを少し止める(とでもいいますか)、とても大切な見解が書かれていると感じました。
注)改革一辺倒の流れ...とくに世論やメディアの報道を"いい意味で"止める(ような感じ)、という意味合いで受け止めて戴ければ幸いです。
中教審(とくに高大接続特別部会)で大学入試改革の方向性が示されるわけですが、中教審における審議の方向性を決める際、その見解において重要な位置づけとなる協会・団体がいくつかあり、その一つが今回(部会にて)説明を行った、一般社団法人国立大学協会、です。
資料中に
ここに今後の国立大学の入学者選抜の改革の方向についての基本的な考え方をとりまとめた。各方面のご理解をいただくとともに、今後の中央教育審議会における審議においても参考とされることを期待するものである。
と、かなり強い意思表明がされている、そんな気がしました。
2013年秋頃から本格的に進められてきた大学入試改革の審議のトーン(注:僕が受け止めている解釈において、であることをご了承ください)とあわせて、下記で説明したいと思います。
なお、引用部分の出典は、資料「今後の国立大学の入学者選抜の改革の方向について」になります。
大学入学者選抜は、本来、各大学がそれぞれのアドミッション・ポリシーに基づいて行うことが基本
この原理・原則については、中教審、高大接続特別部会でも繰り返し確認されていることですので、ここで国大協が表明したことにより、「大学はアドミッション・ポリシーを明確化するべき」との強い意思表明が(高等教育界隈で)なされた、と捉えて構わないと思います。
多面的・総合的に評価する入学者選抜への転換は、「達成度テスト(発展レベル)(仮称)」のみならず各大学の個別試験や推薦入試・AO 入試等を通じて、それぞれのアドミッション・ポリシーに基づき、面接、小論文等を含む様々な選抜方法を取り入れることにより実現していくことが有効かつ現実的である。
これまでは、センター試験そのものを「(幾分かは)多面的・総合的に評価する入学者選抜へ転換」するために、「達成度テスト(発展レベル)(仮称)」へ変えていこう、という流れがそれなりに強かったと感じています。
しかし、センター試験を変えなくても、あるいは「達成度テスト(発展レベル)(仮称)」を設けたとしても、その試験を数十万規模の学生が受験し、その評価において多面的・総合的なものを目指せば、運用面は極めて大変になることが予想されます。
早い話、"(5教科の、しかも「知識」偏重な試験ではなく)多面的・総合的に評価する入学者選抜は必要だが、それは「達成度テスト(発展レベル)(仮称)」だけに求めすぎなくてもよいのでは(その方が現実的では)"という表明になると捉えられます。
一般入試の個別試験における学力検査においては、各大学は従来から記述式・論述式問題の出題を取り入れて、単なる知識だけではなく論理的思考力・判断力・表現力等を評価するように様々な工夫をしてきた。こうした機能は今後とも極めて重要であり、良質な問題を供給し続けるための体制整備が課題である。
知識偏重の学力試験になってはいけない、記述式・論述式問題は極めて重要である、という、国立大学協会の強い意志が伺えます。
事実、昨年来の大学入試改革の動きの中でも、「(入試における)知識偏重はよくない」という意見が強くにじみでていました。
※ここ、ほんと、高校生の皆さん、そして18歳未満のお子さんがいらっしゃる保護者の方は、しっかりと受け止めてくださいね。知識のみで受かるような試験を無くそうとしているのは間違いないですから。。。
一方、実際の大学入試問題を見ると、大学側も「知識偏重はよくない」とは思いつつ、入試の「運用」の効率性などを(結果的に)重視し、知識偏重の問題の出題が年々増えてきていた、そんな気がしています。
※個人的には、入試結果が開示されるようになった→「点数」が明確に出る(かつ、相手に説明できる)問題の方が無難→知識問題に偏っていった、という流れがあるような気がしてなりません。
この流れを止めよう、「記述式・論述式問題の出題」が担っていた重要な機能を忘れてはいけない、そんな意志を感じました。結果
"一般入試の個別試験における学力検査においては、良質な記述式・論述式問題の出題により、単なる知識ではなく論理的思考力・判断力・表現力等を適切に評価するようにすること"
という表現につながっていくと捉えています。
共通試験の活用や大学独自の選抜方法を工夫して一定の学力を確保した上で、面接、小論文、調査書、書類審査等を適切に組み合わせた多面的・総合的な評価による選抜(推薦入試・AO 入試など)を行う入学者の割合を拡大すること
推薦やAO入試で合格する学生は出来が悪い...
大学経営を安定させるため、入学者確保の方法ではないか...
そんな批判が多い、推薦入試やAO入試なのですが、それはあくまで「運用面」の問題であって、推薦・AOで達成しようとしている入学者選抜機能の向上は、決して批判されるようなものでもないと思っています。
アドミッション・ポリシーを明確にし、一定の学力基準を達成度テストで図ったあとは、たとえば小論文・面接・ディベートの試験で、グローバルな人材かどうかを見極める、そんなことがあってもいいと思うのです。
もちろん、運用面で、かなり大変になることとは思いますが、ノウハウを身につけ、仕組み化し、少しずつ拡大する、そんな方向を国立大学が打ち出したことになります。
各国立大学が、このような改革を行うためには、共通試験の基礎的・基本的な学力判定機能が維持されることが重要
「合教科・科目型」や「総合型」の導入は総合的な思考力・判断力を評価する上で有効と考えられるが、多数の受験者に対し一律に実施される共通試験での評価には困難が想定されるため、十分な専門的検討や試行が必要であること。また、これらを導入するとしても、各学部における学士課程教育の遂行に当たってはコア科目に関する適切な能力を有しているかどうかの判定が欠かせないため、高等学校学習指導要領に基づく5(6)教科(7科目)による基礎的な「教科型」学力判定機能は基本的に維持すること。
多様性も大事だけど、基本的な5教科7科目といった「教科型」学力の大切さを決して忘れてはならない―
そんな強い宣誓の気がしました。
正直、2013年秋以降の入試改革をめぐる議論や報道で、「教科型学力は大切だ」という論調をほとんど見ませんでした。。。
もちろん、"教科型学力がすべてになるような試験にならないよう、入試を改革したい!"という強い意志が、高大接続特別部会にあったわけですし、そのこと自体はすごく理解できますが、そのことばかりが報道されると、教科型学力が見放されてしまう危惧も(個人的に)感じていたのは事実です。
このタイミングで、教科型学力の大切さに触れられたことは、バランスをとる意味でもよいことではないでしょうか。
※本ブログはZ会ブログ「和顔愛語 先意承問」2014年8月25日の内容を一部修正し掲載しています。