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顧客サービスとITのおいしい関係を考える

SI会社はいつまでSI会社のままなのか

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企業のIT利用のお手伝いをしていると、SI(システムインテグレーション)会社の方とお話することがよくあります。弊社のお客様は中小企業であるため、おつきあいするSI会社も中小の会社が多いです。

SI会社は要望に合わせたシステムを個別に開発することをビジネスにしています。全くのゼロから開発を始める場合と、市販パッケージをベースにカスタマイズする場合があります。お客様がシステムで実現したいことの聞き取りから始まり、仕様の設計、プログラミング、テストと、高度な知識が要求されて1つ1つの案件毎に手間がかかる労働集約型のビジネスです。

新規開発の間は人手が短期間に大量に必要ですが、稼働して運用保守段階になると人が余ってしまいます。追加開発があっても新規開発の規模に比べて小さく、繁閑の差が激しいビジネス形態とも言えます。従って、SI会社としては常に新規の案件を獲得して、稼働率を一定レベルに保つことが経営の焦点になります。

私がお話した範囲では、どこのSI会社も好景気とは言えないようです。一定して新規案件を受注することが難しいのです。ではSI以外の分野に多角化するのかというと、そうでもないようです。ミーティングの合間などに雑談で「SI以外のことはやらないのですか」ときくと、必ず「むずかしい、できない」と言われます。

中小のユーザ企業を対象として、以下の仮説を考えます。

仮説1
ASP、SaaS、クラウドコンピューティングがユーザ企業に普及して、ユーザ企業がサーバを購入して社内に設置することがなくなる。すでにWebサーバとメールサーバは社外のASPを利用することが普通になった。今後はファイル共有サーバも社外に置くようになる。サーバ販売や設置手数料の売上はなくなる方向にある。

仮説2
景気の低迷に伴い、ユーザ企業がITに投資できる金額は伸びない。システムを自社の要求に合わせて開発する予算が出せる企業は増えないか減少する。

仮説3
ASPやSaaSの機能や選択肢が充実してくることで、業務アプリケーション分野でもASPやSaaSをそのまま使うことが多くなる。カスタマイズが簡単になって、ユーザ企業自身でできるようになる。

仮説4
少子化やIT業界3K説の影響で、必要なスキルを持った技術者を確保するのが難しくなる。

上の仮説をベースにすると、今後はシステム開発をSI会社に依頼する企業の数は増えません。新規案件は増えず、1件あたりの売上も少なくなります。

オフコンの時代に設立されたSI会社は、そろそろ創業30年くらいです。会社の寿命30年説とも言われていますが、これまでずっとSIの会社だから今後もSIしかやらない、と頭ごなしに言い切るのは危険なように思われます。

ヤマト運輸や日通のビジネスは荷物を運んでいるだけではありません。顧客の倉庫業務に進出して、在庫管理や出荷作業を一括して引き受けています。同じく運送業の米UPSは、パソコンメーカーのアウトソーサーになっています。壊れたパソコンをユーザの自宅に取りに行き、それをメーカーに届けるのではなく、自社経営の修理会社で修理してそのままユーザに返すところまでやってしまいます。

SI会社でも、例えば、データセンターを所有してASP/SasSプロパイダーになるとか、自分たちが開発した顧客のシステムを使って日々の業務まで代行するとか、いろいろと考えられるのではないでしょうか。実際、あるSI会社ではデータセンターの不動産ビジネスが大きな割合になっているという話もあります。このようなビジネス形態に転換できれば、一仕事単位の山谷のある売上ではなく、定常的な売上が得られます。顧客とさらに結びつきを深めることも可能です。

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