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once a fanboy, always a fanboy ――いい歳なのに与太話はやめられない

英語を身につけるには動機が必要、だと思う

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 昨年話題になった「村上式シンプル英語勉強法」を今頃になって読む機会があった。

447800580X 村上式シンプル英語勉強法―使える英語を、本気で身につける
村上 憲郎
ダイヤモンド社  2008/08/01

私たちにとって、英語は十分条件ではありません。必要条件です。英語さえ出来れば、日本だろうが、どこにいても、何でも出来るのです。もう遅いなんてことは、決してありません。さっそく始めましょう!(ブックカバーから)

 同書は、当時米Google副社長兼日本法人社長(現在は日本法人の名誉会長)だった村上憲郎氏が著した英語勉強法の解説本で、扉ページには以下のようなモットーが書かれている:

英語とは“2代目の自転車”。
グローバル社会を走り回るための手段であり、道具です。
私の英語勉強法は自転車に乗る練習と同じ。
鍛えるのは、英語を使いこなすための筋力であり、
知力ではありません。
英語は語学ではなく、“語力”なんです。


 全体を読んで感じたことは、
氏の提唱する手法に概ね自分も同意であるということ。しかし、「最初は会話の多い探偵モノを読む」という読書法の提案には全く賛成しない。

 自分も最初に英語のペーパーバックを読もうとして選んだのは、マーロウ等に代表される、いわゆる「ハードボイルド」モノだった。しかし、警察用語や犯罪用語など、スラングがあまりに多く出てくる上に、それらのスラングが物語のカギになる場合も少なくないことから、読んでいて意味不明度が高すぎて、全然楽しめなかった。

 個人的にお薦めするのは、ちょっと文体が古くさくなるけれど、ヘミングウェイの一連の作品。彼の文章は、短くシンプルなのに奥行きが深いという、まさに英語の勉強に相応しい。

0099908409 The Old Man and the Sea
Ernest Hemingway
Arrow Books Ltd  1994/08/18

大学の英語の授業で最初に読まされたのが本書。当時は原文をまったく読まず、日本語訳「老人と海」の文庫本を買ってきて、かろうじて試験をパスしたのが懐かしくも苦い思い出……。

 ただし、前述したとおり、文体がやや古くさく、形容詞の使い方などに関しては今や死語となっているようなものも少なくない。例えば、ヘミングウェイの小説の中では往々にして、イマドキなら「cool(カッコイイ)」という言葉が使われるようなシチュエーションにおいて「swell」という言葉が出てくる。しかし、今の時代に「swell」と言っても、相手はこちらが何を伝えたいのかサッパリ理解できないだろう。ま、そういう古くさい老人のような言葉をわざと使うことでギャグにできるぐらいになれば、それはそれでかなりクールかも……。

 さて、村上氏は本書の最終章のまとめにおいて以下のように書かれている:

 そもそも、「外国人と話すのは恥ずかしい」などと言っているようでは、これからの世の中は厳しいですよ、本当に。
 世界を見ても、英語をしゃべれない大卒生を排出しているのは日本の大学ぐらいですから。


 実はこれと同じようなことは、自分が大学を卒業した20数年前の当時にも言われていたことだ。結局は、英語(もしくは母国語以外の言語と言い換えても良いだろう)を使えるようになるかどうかは、当事者がどれだけそれを必要としているかに尽きる。

 例えがちょっと悪いかもしれないけれど、ネット上に氾濫している「教えてください」的なQ&Aサービスを見ていると、あそこを便利だと思い、どこかの誰かが答えてくれるのをいつも待っているような、そんな受動的生活をしているようでは、英語は身に付かないと思う。

 自分の場合は、オーストラリアで生活していたときに、店で買い物をしていて万引きに間違われて詰問された際、論理的に弁明できずに大きなトラブルになりかけた事件が、英語をちゃんと使えるようになろうと思い立ったキッカケだった。幸いなことに、その場ではオーストラリア人の友人がすぐ側にいたので、事なきを得たのだけれど。まぁ、これぐらいのインパクトが無いと、なかなか他の国の言葉をまじめに身につけようとは思わないし、「使える道具」としての外国語習得には至らないのかもしれない。

 ちなみに、英語ネイティブな恋人が出来れば英語を覚えられるという都市伝説があるけれど、あれは半分本当で半分嘘。なぜなら、恋愛というのはやはり世界的に「以心伝心」が共通言語だったりするので、かなりテキトーな言葉のやりとりでも通じてしまうし、言葉よりも目やボディタッチが雄弁だから。さすがに、そういうコミュニケーションの仕方だけで全ての人とやりとりするのは不可能でしょ(笑)。

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