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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

新入社員研修の風景④:「頑張ろうと思います」「積極的になる必要があると思います」って?精神論では何も変わらない。

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いくつかの企業の新入社員研修と数多くの企業のOJTトレーナー研修の両方を3月からスケジュール的には入れ子で担当中です。新入社員研修⇒OJTトレーナー研修⇒新入社員研修⇒新入社員研修⇒OJTトレーナー研修⇒ときどき、新入社員研修を担当する内製講師向け教え方研修⇒新入社員研修・・・。

新入社員研修でもOJTの現場でも日報や週報を書かせている企業は多いことと思いますが、新入社員の日報や週報は、たいていの場合、「内省が浅い」のです。(※1)

そして、精神論みたいなコメントが並びます。

「今日は積極性が足りなかったので、明日からは積極的にならなければならないと感じました」
「テキストの敬語の問題はできたが、実際にロールプレイの中では敬語が臨機応変に出てこなかったからもっと練習を頑張ろうと思います」
「何事も場数だと思うので、場数を増やす必要があると感じました」

・・・・。

行数を埋めていても、よくよく見れば、大して具体的なことは書いていない。

「積極性が足りなかった」とはどういう場面でそう感じたのか。
「明日から積極的になる」には何をすればよいのか。
「臨機応変に敬語が使えるようにする」ために、どんな練習を行いたいのか。
「場数を増やす」のは、どこで誰と何をすることを指しているのか。

・・・・。

こういう日報、たとえばA4サイズの用紙(フォーマット)に目いっぱい書かれていると、「ああ、ちゃんと書いてあるなぁ」と一瞬思ってしまいますが、じっくり読めば、「何も書いていない」のとあまり違わない。

ここはひとつ突っ込まなければなりません。

「積極的になる」とは、一体、何をどうすることを指しているのか。具体的にいつから何をするのか。それが「積極性」ということなのか。
そもそも、なぜ「積極的」である必要があるのか。人事の方や講師が「積極的ではないですね」と言ったからなのか。

「場数を増やす」と言うけれど、何をどうやって場数を増やすのか。

毎日のように「積極的になろう」「頑張ろう」「場数を増やそう」と書いていても、書いただけで何かが変わるわけではなく、具体的に何をしようと思っているのか、そのために、誰に何を助けてもらいたいのか。ぐーっと内省していかなければ学びにはならないのだけれど、ここを踏み込んで深く考えるのが苦手です。

考えるのが苦手なので、具体的に書くのも苦手です。

考えていないことは文字に直すことが出来ないから。(※2)

講師もOJTトレーナーも、こういう時、「だからどうするのか?」「そう思うなら、何をするのか?」を問い、それを言語化するサポートをし、「そこまで口にしたのなら、それを書きましょう」と促す必要があります。


「ふりかえる」というのは、簡単なようでそうそう簡単ではなく、「ああ、失敗したなぁー。明日は成功しよう」「ああ、練習不足だったなぁー。明日はもっと練習しよう」・・・。この程度の内容では、明日からの行動は何ら変化しないはず。

精神論で物事は動かないので、具体的にTODOに落とし込まなければならないのです。

それと、「思います」

思っているだけで何かをするわけないのかもしれません。

「思います」ではなく、「●●します」とまずは宣言。

宣言した「●●」を行動に移す。その支援も大切です。

講師やOJTトレーナーだけではなく、新入社員同士でもこういう突っ込みはできるはず。

「ほら、また、精神論になっているよ。具体的に何をするの?」と互いに突っ込む。新入社員同士で互いに相手の学びを支援することは、相手のためでもあり、自分のためでもあります。

「ふりかえり」の時間に、互いに突っ込み合うパートを入れるのもGOODです。

(※1) 内省が浅いのは、実は新入社員に限ったことではなく、中堅でもベテランでも内省が浅い人はいます。何を学んだのか、何に気づいたのかを具体的に表現できないという人は案外多いとよく感じています。

(※2) 「考えていないことは文字に表せない」のはそうなのですが、一方で、「考えていて」も「文章力、語彙力」が不足しているため、頭の中の概念を文字に直すことが出来ないというケースももちろんあります。


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