「幼児期とICT」2つの具体例の提案。〜幼稚園・保育園の「ICTたいむ」より〜
幼児期とICT。
現代の子ども達。
幼児期(今や乳幼児の時からかもしれませんが)から、スマートフォンやタブレット端末、ゲーム機などのICT機器に慣れ親しんでいる光景は、珍しいものではありません。
内閣府による「低年齢層の子供のインターネット利用環境実態調査」からも、現状が報告されています。
便利だから、楽しいから、好きだから、、、
様々な理由から、幼児期にICTを活用する機会は増えていますが、その中には、
「ついつい使わせる事があるけれど、どんな活用がよいのだろうか」という不安な声もあると思います。(実際に相談される事が増えてきました)
この記事では、幼稚園や保育園でICTを活用した活動に関わってきた経験から、幼児期とICTのより良い関係について書いてみようと思います。
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私の会社(NEL&M)では、2014年より幼稚園や保育園の正課保育における「ICTたいむ」という取り組みを始めました。
年長園児を対象に、iPadをクラス全体やグループで活用し、
絵本を作って発表したり、コマ送りアニメをつくったり、海外と交流したり、、、
「つくる・つたえる」をテーマとしたICT活用のカリキュラムを用意して、楽しく活動しています。
その結果、
・様々な場面で積極的に友達とアイデアを出し 合うようになった
・人前に立つことに慣れ、堂々と発表すことができる様になった
・自分の考えや経験を友達に伝えることに喜びを感じる姿が見られた
・言葉選びを工夫する様になった
・協力することや順番を守ることが自然とできる様になった
・友達の良いところを見つけたり、認めたりすることが増えた
という、園児たちの嬉しい育ちが見られるようになりました。
※どのような内容なのかは、こちらをご覧ください。
⼩中⾼の現状から考えた、幼児期のICT活⽤ (2016公開資料)
「ICTたいむ」の中から、ご家庭でも役立ちそうな例を2つ紹介します。
例1:えほんづくり
ICTタイムの定番の活動として「3人で1冊のえほんづくり」というものがあります。
その流れを紹介します。
「用意するもの」
・iPad:1台 ・アプリ:ピッケのつくるえほん for iPad
直感的な操作で「えほん」をつくることができるアプリです。
朗読している声を吹き込み、動画の様に見ることも出来ます。
印刷して製本すれば、紙のえほんも出来上がるという優れたアプリです。
ICTタイムでは、3人で1冊のえほんづくりにチャレンジしています。
・お話を考える(話し合う)
・1人1見開きを担当して、3見開きのえほんをつくる
・えほんの題名を考えて、入力する。
・作者として、自分たちの名前を入力する。
・表紙と裏表紙の絵を協力してつくる
・印刷したものをハサミで切って、貼って、製本する
・えほんを発表する(読んでもらう)
という流れです。
3回(1回が30分〜45分程度)に分けて活動しています。
1人だと、上手くいかなかったときに諦めてしまう場合もあるでしょう。
協力する仲間がいると、お互いの良いところを真似したり、教え合ったりしながら完成までたどり着くことができます。
自分と違った発想や表現にも触れる、感性の幅が広がる様に思います。
それに、発表(読んでもらう)の時は、みんなとっても嬉しそうは表情を見せてくれます。
親子で、兄弟や姉妹で、一緒に一冊のえほんをつくってみてはいかがでしょうか?
誰かにプレゼントするためにつくるのも良いかもしれません。
子どもといろんなお話をしながら、えほんづくりを楽しんでみてください。
例2:コマ撮りアニメ
「用意するもの」
iPad:1台 ・アプリ:ストップモーションスタジオ
連続写真を撮影して、手軽にアニメーション作品をつくることができます。
・どんな作品にするか、アイデアを出し合う(現実離れしている方が面白い)
・撮影してみる(カメラマン、道具を動かす人、など役割を分担)
・再生して確認する。場合によっては撮り直す
・完成した作品を発表する(楽しむ)
人が壁を通り抜けたり、消えたり、動きそうにないモノが動いたり、
アイデア次第でとっても楽しい作品になると思います。
ご家族で楽しんでみてはいかがでしょうか。
最後に、大事なポイントを3つ。
「おやくそく」
「ICTたいむ」では幾つかのお約束を設けています。その中で一番の基本となるものは
「まつ・みる・おうえんする」
です。
順番を待つ、他の人の操作や作っている様子を見て学ぶ、困っていたら応援する(助け合う)。
毎回「まつ・みる・おうえんする」を確認してから活動しています。
「みんなで1台」
1人で1台のiPadやスマートフォンを使える環境だと、どうしても時間を忘れて没入してしまうことがあります(子どもに限らず、大人もそうですよね)
特に幼児期は、面白い動画の視聴やゲームなどを自律的に止めることが難しいと思います。
みんなで1台を共有することで、過度な没入を防ぐことができますし、目の前で手本となる様な人がいてくれると、どうすれば良いかを自然と学ぶ機会を与える事にもつながります。
「まつ・みる・おうえんする」の様な「おやくそく」も効果を発揮しやすいです。
「つくる」
誰かがつくったものを見たり操作する「受け身」なICT活用だけではなく、自分が「つくる」側になる活用を通して、想像力や創造性を高めてみませんか。
子どもと一緒につくる中で様々なことを話したり、作品を見せてもらった時の感想を伝えるなど、豊かなコミュニケーションを意識してください。
幼児期の子どもたちは、自分の考えや作品を身近な人(特に大人に)見てもらうこと、驚いてもらうこと、褒めてもらうこと、話を聞いてもらうことが、とっても大好きです。
状況によっては1人でiPadやスマートフォンを活用する事もあるかもしれませんが、
親子の関わりが増える様な機会を設けて、子どもと一緒に楽しんでみてください。
※この記事は「教育ICTデザイナー 田中康平のブログ」2017/12/14の記事を一部修正し、掲載しています。