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Xerox Star の思想を継ぐ? 富士ゼロックス「DocuWorks」

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最近のブログでコンピュータの歴史のようなものを2度ほど書いたところ、何人かの方から面白かったと言っていただきました。

Windows NT の祖先は DEC の VMS。では、Mac OS の祖先は?

Apple Lisa から iPhone, iPad までの変わらない思想

そこで「第3弾です」と言えるほど内容的に深くはないのですが、もう少し歴史を遡ってみました。

Xerox はコピー(最近では複合機)の会社ですが、コンピュータの歴史に大きな影響を与えています。そのひとつが、シリコンバレーにある Xerox Palo Alto Research Center (PARC) で開発された技術をもとに作られた、Xerox Star ワークステーションです。Wikipedia によると 1981 年に発表されたようです。Star には Mouse, Bitmap Display, Ethernet, Icon, WYSIWYG (What You See Is What You Get) などの当時の最新技術が搭載されていました。日本では、1983 年前後に JStar という名前で発売されて、私は幸運にも Xerox のショールームで、グラフィックを使ったデモデータを入力するというアルバイトで、実際に実物を使って作業をする機会を得ました。

Star は、ワークステーションと呼ばれていましたが、Xerox らしくドキュメントの作成と管理に特化したコンピュータで、ファイルキャビネット、フォルダー、ドキュメントなど、本物のオフィスと同じメタファーを用いたユーザインタフェースによる使い易い環境を提供していました。当時は、まだ Windows などなく、コンピュータの操作は、文字ディスプレイにキーボードからコマンドを入力することが当然だった時代において、Star は大きな衝撃を与えたと思います。

最近、富士ゼロックスが開発したドキュメント・ハンドリング・ソフトウェアの「DocuWorks」を使う機会がありました。「DocuWorks」はできるだけ、紙と同じ感覚で使えるようなソフトウェアという思想があり、実際に使ってみると Windows が扱うファイルと、DocuWorks が扱うドキュメントには大きな違いがあるということが良くわかります。

たとえば、配布される紙のドキュメントには、Word で作ったものと Excel で作ったものが混在していることはよくあることですが、ファイル形式が違うファイルを統合して扱うことは、考えられていません。DocuWorks はドキュメントが原点なので、当然のことながら作成ソフトに依存することなく自由に組み合わせたドキュメントを作ることができるのです。また、紙と同じように、書き込みをしたり、付箋を付けたりすることができ、デスクトップ上に並べた文書にも、書き込みや付箋が見えるというのも面白いところです(下のスクリーンショット参照)。

Docuworks2

富士ゼロックスは、API を公開するなど外部のソフトウェアや機器との連携を強化しているようですが、ユーザインタフェースは独特です。DocuWorks の世界観の中では、まとまっているのですが、Windows のアプリケーションの一つとして評価したり、他のアプリケーションと一緒に使おうとすると、違和感があります。特にキーボードショートカットは直感的でない (Windows と違う) ことが多いので、たとえば自分で定義可能にするなどの方法が必要だと思います。DocuWorks は、特にコンピュータの専門家でない方々からの評判が良いようなので、バージョンアップによってユーザインタフェースを変えにくいという事情があると思われますが、先進ユーザにとっても使いやすくあって欲しいと思いました。

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