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ソフトウェア製品開発現場の視点

渋谷・鹿児島IT情報交換会(@鹿児島)報告

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前のプログで紹介した NPO渋谷・鹿児島文化等交流促進協議会、国立大学法人鹿児島大学、東京商工会議所渋谷支部IT推進協議会主催のシンポジウムが6月12日(金)に鹿児島大学の稲森会館で開かれ、クラウドコンピューティングについてのパネルディスカッションに参加した。

このシンポジウムのテーマが決められた昨年秋の時点では、クラウドコンピューティングがこれほどまでに注目されるとは予想できなかったと主催者の方々が話されていたが、まさにその通りで、テーマ選択は非常にタイムリーであった。話題性が高まっていたことで、200人前後の参加者があり、質問も活発にでるという、活気のあるシンポジウムであった。

基調講演で、マイクロソフト CTO の加地佐さんが見せてくれた、未来の IT 社会のビデオは、現在のどちらかというと地味な IT 定着期が終わった後に、再び夢を実現する道具として IT がさらなる発展に向かうという希望を持たせてくれた。IBM は、Smarter Planet というビジョンで、社会と一緒に歩む IT 技術という面から IT の将来を考えようとし始めているが、マイクロソフトはより個人に近い道具という面から、未来を見ているところが面白い。見方は違うが、どちらも社会と IT のより密接なつながりを見せようとしているところに共通点がある。技術だけでなく、より社会と連携しなければいけないという認識は、今後より強まっていくに違いない。

パネルディスカッションで与えられたテーマの一つは、ローカル(地域)でクラウドをどのように利用するかというであったが、クラウド自体がグローバル志向ということもあり、ローカルで特色を出すのは難しくなっていくであろう。一つの解は、グローバルにつながったプラットフォームを得たのだから、もうローカルは意識しないでグローバルでなにができるかを考えることである。クラウド提供者が数多く出てくることは、産業自体が構造変化することであるので、その隙間にはいろいろなビジネスが発生することは明らかである。たとえば、自動車産業が大手自動車メーカーに集約されたとしても、大手自動車メーカーだけで産業は成り立たない。周辺に修理工場やガソリンスタンドのような、技術・サービスを提供する会社があることで、自動車産業が成り立っている。クラウドが一大産業になると周辺にさまざまなビジネスが発生する。ただ、自動車産業と異なるのは、クラウド周辺の新しいビジネスの多くは、地域への依存がほとんどないために、いきなりグローバルなビジネスとして立ち上がってグローバルな競争に巻き込まれることである。したがって日本で成功したからグローバルに出て行くという発想が通じなくなる。

ローカルに残される可能性があって、ローカルの非常に重要な役割のひとつは、最初からグローバルで競争するための斬新なアイデアを生む教育だと言う気がしている。新しいイノベーションを起こすことができる教育は、これまでの教育とは全く異なる教育かもしれない。クラウド時代の教育はどのようにするべきかというような議論が出てきても良いタイミングかもしれない。

ローカルの可能性のもう一つは、コンサルティング的なサービスである。世界で数えきれないほどのサービスが提供され始めるので、ユーザはそれらのサービスを組み合わせて自分の目的に合った統合サービスをくみ上げる必要がある。そのときにユーザの立場に立って、もっとも効率的な組み合わせ方を提案してほしいという要望はでてくるに違いない。

いろいろ、書いてみたが、実際はこれからの動きを見てみないとわからないことも多くある。ただ、クラウドという言葉が、こういった疑問を投げかけ、稲森会館にたくさんの方々を集め、熱い議論を起こした。その意味で、この言葉の役割は大きかった。


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