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ソフトウェア製品開発現場の視点

Smarter Planet を技術面から考えてみる

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すでに、複数のブロガーが投稿していて、遅れてしまったが、IBM 主催のブロガーミーティングでの "Smarter Planet" という話は、コンピュータの今後の技術的チャレンジを考えさせられるものであった。人類の月着陸は、ゴールを明確にすることによって、普通のやり方では不可能なものを可能にした典型的な例である。ただ、Smarter Planet は明確なゴールではなく、そのゴール設定からして大変なものになるということをブロガーミーティングでの議論から感じた。ミーティングでは、Smarter Planet という方向性自体への反対はなかったが、この言葉によって考えることが、その人の立場それぞれで違っているというのが非常に興味深かった。私は、技術をベースにして Smarter Planet を考えてみた。

技術の進歩によって、トランジスタの値段が米粒よりも安くなり、RFID なるものを取り付けることによって、膨大な情報を手に入れることが可能になった。それを処理する側のコンピュータの能力も急速に発展して、携帯電話が昔のスーパーコンピュータレベルの処理能力を持っている。

今の問題は、有効利用できれば膨大な価値を生み出す情報が、利用されずに捨て去られていることである。その価値に気づいた人が、データマイニングなどの各種手法を用いて、情報から価値を取り出している。しかし、それぞれの情報は、狭いビジネスの範囲で、利益を生み出すことに用いられているので、"Planet" を考えての利用は進んでいないと思ってよい。

情報の利用は、見えないところでも進んでいる。朝の電車の混雑度をしらべることで、電車の運行プランや、将来の路線拡張プランが作られているが、ある程度の年齢以上の人は、年に数回、「利用調査」が行われていたのを覚えていると思う。乗車した駅で、乗車駅名を書いた紙をもらって、降りる駅でそれを渡すだけであるが、それによって鉄道会社は乗客の乗車パターンをつかみ、それを運行計画のもとにしていたのである。しかし、自動改札が普及した現在、乗車パターンデータは、毎日勝手に取得できる。ただ、毎日リアルタイムにデータは取得されているのにも関わらず、そのデータがリアルタイムに有効に利用されているようには感じられない。

リアルタイムのデータ利用が確実に利益をもたらし、"Smarter Planet" の思想にも合致していると思われるのが、渋滞対策を含む、車のフロー対策である。その代表的なものが、渋滞情報をカーナビの最適路の判断に使う技術である。もしカーナビで渋滞情報を利用する車が一部であったとしても、渋滞を避ける車が出てくることで、総合的に渋滞を少なくすることができている。ホンダの車のカーナビの中には、同じ仕様のカーナビを持っている人全員が自分の位置情報をサーバーに送ることで、渋滞情報が作られているものがある。これをもっと進めると、車の前方の信号が遠くから見たときには赤であっても、その信号に差し掛かる前に信号青に変えるというようなことができるようになる。

世界が複雑化していく中、技術と社会が切り離すことができなくなっている。先日、九州で訪問した2つの大学のソフトウェア系のコースの名称にも "社会情報" という言葉が入っていることも偶然ではないと思う。"Smarter Planet" は、技術の "Smart" と社会の "Planet" の両方を示しているとともに、"er" によって技術のさらなる発展への期待が含まれていると理解したい。

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