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「生保」というと最近は「生活保護」の略称だったりしますが、こちらは「生命保険」です。保険会社(メーカー)、代理店(販社)だと言いづらいこと、言えないことを、分かりやすく書いていきたいと思います。新規加入や見直しの際にご参考にして頂ければ幸いです。また、取り上げて欲しいテーマがあればリクエストしてみて下さい。可能な限りお答えしていきます。

「通信中学講座」生命保険編 #000 ~なぜ今「通信中学講座」なのか~

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我が国において100年を超える歴史がある生命保険に関して、大人たちは大いなる先入観を持っています。
その「先入観」とはどんなものがあるのかを挙げてみます。

・生命保険なんかどこで入ってもたいして変わらない
・外資は撤退したらえらいこっちゃ(契約が置き去りで無効になる?)
・生命保険はひとつの会社で死亡の入院の保障もまとめて加入するもの
・知り合いから入れば間違いない
・TVCMをやっているような誰でも知っている大手なら、変なことはしないだろう

他にもあるとは思いますが、上記のような先入観から、大人たちは生命保険に関して事実上の「思考停止状態」になって誰でも知っている伝統的国内生保に加入して、50歳を超えるころに愕然とするのです。
その理由として・・・

・保険料がアップするので継続は難しい
・継続しても医療や介護の保障は60~65歳まで
・最後に残る死亡保障はたったの10万円ポッキリ

・・・のようになってしまう契約が大半を占めることになり、それに気付いた時に愕然とするのです。

数字で言いますと昨年度の実績において、上記の「先入観」の源となる伝統的国内生保に新規加入する人は7割近くを占めることが象徴的です。

第二次世界大戦後に、戦争未亡人のために「生保レディ」という仕事が生まれ、高度成長と護送船団方式という中で売上を伸ばし、80年代後半からのバブル景気の際には不動産や株価と同じように膨張し、その後のバブル崩壊では同じように弾けてしまい、その数年後の1996年に大きな変化がありました。

大きな変化があった96年までは、国内生保であればそれこそ「護送船団方式」で、どこで加入しても保障内容も保険料もほとんど同じような状況であったため、職場に来るスミセイのお姉さまから入ろうが、隣に住んでいるニッセイの未亡人から入ろうが保障内容や保険料は同じだったので、担当者の個人的な独自サービスの優劣でどこに加入するか判断していたのです。

96年には「金融ビッグバン」と呼ばれる規制緩和があり、生命保険会社が損害保険を、損害保険会社が生命保険を子会社で取り扱えるようになりました。
(保険業法的には兼業は原則禁止となっていますが、条件を満たせば認めるという緩和措置です)
(現状「生保系損保」は消滅して「損保系生保」が伸しています)

また、国内社がこれまで規制があった「第三分野」と呼ばれる死亡保障以外の医療や介護保険を扱えるようになり、国外社が「第一分野」と呼ばれる死亡保障を扱えるようになるという規制緩和もありました。

またそのころ同時に、いわゆる「乗合代理店」という複数の保険会社を扱える代理店が誕生します。

それまでは、保険代理店といえば損害保険で一社専属、または企業内でアフラックの代理店をやっている、という形態がほとんどでしたが、目端が利いている生命保険、損害保険の代理店経営者や企業内代理店などが複数の保険会社を乗合い、「ワンストップで複数の保険会社の商品を比較できる」「保険商品のいいとこどりができる」という現在のかたちをつくり、その後の保険ショップの台頭に結び付きます。
(我が国における「保険ショップ」の起源は一社専属の「アフラックショップ」であると言われていますが、その代理店も今では乗合代理店になっているようです)

昨年の2012年ごろまでは、「乗合代理店である保険ショップ」が最先端で、従来の訪問型であっても「乗合代理店」であれば中立的な提案が受けられて満足のいく保険に加入できる、という流れがあったように思います。

しかし、本年2013年3月にある経済誌で取り上げられた「最大手保険ショップ創業社長の脱税疑惑」と「恣意的な手数料優先の販売疑惑」がひとつのキッカケとなり、「乗合代理店である保険ショップ」の信用や販売手法が曲がり角に来ていることが表面化しました。

業界内では「脱税疑惑」にしろ「手数料優先疑惑」にしろ以前から燻っていたことでしたが、メジャーな経済誌に掲載されたことで少なからずインパクトがあり、業界の内外に広く知れ渡ったことはある意味衝撃的であったと思います。

そして現在は次にステージに差し掛かっています。

最大手の「脱税保険ショップ」のみならず、乗合代理店であればどこでも「中立、公正、客観的な提案をするから安心」と何とかの一つ覚えよろしくチラシや看板に並べていても、賢い消費者にはそれが眉つばであることは半ばバレてしまいました。

そもそも「中立、公正、客観的」であることを言葉やチラシの宣伝文句だけで担保しようとする胡散臭さ。

そしてリーディングカンパニーのトップにおける脱税というコンプライアンス違反による失脚。
(保険業界は「コンプラ違反」について過敏症なのです)

このような状況では「信頼できる代理店や担当者を選びましょう」などという言葉は、どれだけ空虚なのでしょうか。

それならどうすればいいのか、消費者自身が知識を付けてわが身を守るしかないのか・・・というのが、今現在のステージです。

そんな西暦2010年代の半ばなのですが、未だに生命保険について1990年代半ば以前の常識を信じ込んでしまっている「大人」があきれるほど沢山いて、伝統的国内生保に新規に加入する「大人」が7割近くもいるのです。

この原因は契約者が悪いというより、我が国の生命保険業界をとりまく構造がこの状況をつくっています。

つまり、伝統的国内生保を中心とする既得権者が、このような状況をつくりあげているいる、と言ってもいいかもしれません。

おかげさまで、現状でも7割近くを占める新規契約者は20年近く前の先入観を刷り込まれたままになっているのです。

そしてそれを変えるのは容易ではありません。
もう次のステージに差し掛かっています。

「先入観を刷り込まれた大人たち」のことは横に置いといて、これからのニッポンを背負う中学生の皆様には健全で合理的に生命保険を活用できるようになっていただきたい、「思考停止」により既得権者の思う壺にはまらないで欲しい、という目的で「通信中学講座」の生命保険編を始めました。

受講料は無料です。
中学生の皆さんは受講後、できればご両親に教えてあげて下さい。
それと「先入観を刷り込まれた大人たち」でないと思われるこのブログの読者の皆様は、是非ご確認の意味で受講してみて下さい。

 

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