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「生保」というと最近は「生活保護」の略称だったりしますが、こちらは「生命保険」です。保険会社(メーカー)、代理店(販社)だと言いづらいこと、言えないことを、分かりやすく書いていきたいと思います。新規加入や見直しの際にご参考にして頂ければ幸いです。また、取り上げて欲しいテーマがあればリクエストしてみて下さい。可能な限りお答えしていきます。

少々残念な「生命保険1000万円リストラ全テクニック(週刊ポスト掲載)」 その1

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先日発売された「週刊ポスト(8月24日号)」に「生命保険1000万円リストラ全テクニック」という勇ましい特集記事がありました。

執筆は「生命保険の罠」などの著者である"生命保険仕分け人"後田亨氏で「有料の保険相談」をスタートさせたという方です。

内容は生命保険を見直す際のテクニックを9つのポイントをまとめています。

1.保障内容以外の"ウリ文句"は無視せよ
2.「パッケージ型の保険」は選ぶな
3.「死亡保障」は最小限に
4.「医療保険」はいらない
5.「がん保険」「先進医療特約」はいらない
6.まずは「団体保険」「共済」を検討せよ
7.どうしても必要なら「収入保障保険」
8.「貯蓄目的」で保険に入るな
9.「お宝保険」は解約するな

誠に残念でありますが、9つのうち全面的に納得できるものは「2」だけで、基本的に意図するところで共感できる部分はありますが、事実誤認や説明不足、また極めて偏った見解が多く見られ、読者に誤解を与える可能性があるものがあります。

それではそれぞれ指摘してみます。

1.保障内容以外の"ウリ文句"は無視せよ

「・・・保険においては商品の安さこそが一番のサービスです」
と後田氏は言い切っています。そしてそれは人件費を掛けていないネット生保でこそ実現できるものである、と説いています。

全く同じ内容であれば、生命保険に限らず負担が軽い方がいいに決まっていますが、このブログで何回も指摘している通り、人件費をかけないネット生保がすべて安いとは限りません。

いろんな意味で「お節介」を売り物にして成績優秀者には高額の報酬をはずむソニー生命の方が、死亡保障である定期保険の保険料が安くなるケースがあることや、通販だけでなく代理店を通して販売しているオリックス生命の方がほぼ同じ保険料負担の医療保険で保障内容が充実している事実があることを全く無視しています。

ソニー生命など「非喫煙割引制度」がある保険会社は、そのために検査を行う「生命保険面士」の人件費と非喫煙かどうかを検査するための「コチニン検査キット」の実費を負担して30歳代以降の非喫煙者における定期保険の保険料をライフネット生命より安くしています。

変な話ですが、わざわざライフネット生命より人件費はもとより、検査キットや余計な手間と経費をかけて保険料を安くしているわけです。

それでもソニー生命などはきちんと採算がとれているわけですから、ライフネット生命などは企業努力が足りないか、不当な「付加保険料(人件費を含む保険料内の経費の部分)」を貪っているか、ということになってしまいます。


3.「死亡保障」は最小限に

表題については賛同できますが、内容について疑問が残ります。
遺族年金や勤め先の弔慰金や死亡退職金を考慮すれば「・・・民間の生命保険は不要かもしれない」と言い切っています。

ここで事例として<勤続25年の平均でで弔慰金約418万円、死亡退職金約970万円>と高額な数字が出されていますが、<勤続25年>までいかない年数だとこの金額に達しません。
つまり、つまり大卒ストレートで入社10年目の33歳だとこの半分以下の金額にしかならず、一番保障が必要な第2子誕生のタイミングが33歳であれば、絵に描いた餅でしかありません。

また、この弔慰金、死亡退職金の規定は勤務中とそうでないケースで金額に差をつけているのが普通ですので、分かりやすい「業務の移動中の事故死」や「現場作業中の事故死」であれば満額出ますが、病死などであれば明らかに業務と因果関係があるものでなければ、満額出る可能性はかなり低くなります。

死因の90%以上を占める病死が勤務中による死亡とみなされるのは稀です。
勤務中に脳卒中で倒れてそのまま職場で亡くなったとしても、脳卒中の要因はその方の生活習慣であり遺伝による可能性もあるわけで、勤務中の死亡であってもその原因は他のところにあれば「勤務中の死亡」とならない可能性があります。

つまり、勤務先の制度に頼る、あるいは基本にするのはリスクが高いということです。
転職やリストラの可能性がある現代において、生命保険を勤務先に委ねるのは危険過ぎるという側面もあります。

<「死亡保障」は最小限に>という文言には大いに賛同しますが、生命保険はあくまで個人のものであり、継続性がなければ意味がありませんので、<最小限>はいいとしても勤務先の制度を第一に考えてプランニングを進めるのは無責任である、というのは言い過ぎでしょうか。

「アドバイス通りに、勤務先の制度を最大限利用して民間の生命保険に入らずにいたけど、リストラされて保険がなくなってしまった。新たに生命保険に入りたいが最近糖尿病になってしまったためにまともに入れない。どうしたらいいのか?」などと<有料の保険相談>に相談に来られる方がいたら何と答えるのでしょうか?

まさか「リストラされたのはあなたの責任でこちらに言われるの筋違いです」と相談料をふんだくって言い放つのでしょうか?

確かに正論かもしれませんが、保障のアドバイスを行う上では極めて不適切です。
あくまで個人に属するかたちで生命保険は担保するものであり、勤務先の制度は考慮してもメインにするものではありません。

遺族年金については日本国が破綻さえしなければ、金額の増減はあっても制度自体はなくならないと考えられるので保障の一部と捉えて保障設計をすることはありますが、不確定要素が大きすぎる勤務先の制度を利用することで「・・・民間の生命保険は不要かもしれない」などということにはなりません。

<2.「パッケージ型の保険」は選ぶな>は全面的に賛同すると書きました。
大手国内生保が特約テンコ盛りで、無駄と思われる保障を分かりづらい構造にして不当に単価を上げているので、生命保険は死亡、医療など単品で安くていいものを見極めて加入せよ、という内容です。

要するに大手国内生保などは無駄な保障、無駄な保険料を消費者に押し付けてくることが問題だということですが、この「勤め先の弔慰金や死亡退職金を考慮すれば・・・民間の生命保険は不要かもしれない」という考え方は、必要な保障を確保できなくなる可能性が高くなり、大手国内生保などよりタチが悪いことになってしまいます。

極論ですが、保障が過剰であった場合万一のことがあっても困りませんが、保障がきちんと確保できていなかった場合はシャレになりません。

結果論として、一定年齢まで何事もなければ保険料の負担が少ない方がよかった、ということになりますが、保障を提供したりアドバイスする立場では、保障をきちんと確保できないより過剰である方がまだマシなのです。

お客様が「そこまではいらない。会社と国の保障で充分だ」と言われるなら、それこそ自己責任ですが、保障に携わる者が初めから「勤め先の弔慰金や死亡退職金を考慮すれば・・・民間の生命保険は不要かもしれない」と勧奨するのは無責任の謗りを逃れません。

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あと6こ残っています。
簡潔にパッパと書こうと思っていたのですが、長くなってしまったので以下次号で連投します。

他にもいろいろ書いています。
ご興味があればお立ち寄り下さい。

保険選びネット                                   http://www.hoken-erabi.net/seihoshohin/goods/7596.htm                  <具体的な商品の比較など月一で書いています(ほぼ月末更新)>
話題沸騰のライフネット生命の商品を客観的に分析しました。

ヤフー知恵袋
http://my.chiebukuro.yahoo.co.jp/my/shigotonin38
<知恵ノートはほぼ月二で随時更新、生保関連の質問にも答えています>
ご指名の質問大歓迎です。

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