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「生保」というと最近は「生活保護」の略称だったりしますが、こちらは「生命保険」です。保険会社(メーカー)、代理店(販社)だと言いづらいこと、言えないことを、分かりやすく書いていきたいと思います。新規加入や見直しの際にご参考にして頂ければ幸いです。また、取り上げて欲しいテーマがあればリクエストしてみて下さい。可能な限りお答えしていきます。

生命保険における「信頼できる担当者の弊害」

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前回<「信頼できる担当者」と言っても様々で、実は今回お話ししたことと同じようなジレンマが発生してしまうことがあります。>で終わりました。

それでは「信頼できる担当者」とはどのような人物になるのか考えてみます。

A、人柄が信頼できる
B、勧める商品はいいものであるし、説明も分かりやすい

BであるからAになる、というケースはありますが、必ずしも<A=B>ではありません。
また「勧める商品はいいもの」という判断は、お客様の主観的なもので、必ずしも客観的なものではありませんし、長期的な買い物(生命保険や住宅など)においては、購入したときはいいと思っていたけれど、しばらくすると取り返しがつかない瑕疵に気づくことがあるかもしれません。


それでは、生命保険の募集人(生命保険を売る人)とのファーストコンタクトのパターンを考えてみましょう。

1.飛び込みによる戸別訪問
2.会社の昼休みに飴などのお菓子をもらってしまった
3.友人・知人や親戚などが生命保険の募集人になったので話を聞いた
4.友人・知人や親戚などからの紹介
5.保険ショップや銀行の窓口に相談に行く
6.ネット上の保険サイトなどにアクセスしてそこから紹介される

従来の個人保険の場合はこの1~4のパターンになると思いますが、最近は5,6も増えています。
ほぼ例外なく、一般消費者は「保険素人」ですから、どのファーストコンタクトであっても適切なヒヤリングと素敵なプレゼンテーションがあれば、募集人は「信頼できる担当者」になりえます。

特に厄介なのは3と4で、ファーストコンタクト以前から「A.人柄が信頼できる」というバイアスがかかっています。

3ではもともと人柄など知っているわけで、友人関係や肉親であれば「オレに損させるはずがない」と思うのが普通ですし、紹介となれば「私もいい保険入ったから話だけでも聞いてみて。信頼できる人だから」と少なからず<ティーアップ>されていますので、「A.人柄が信頼できる」はクリアされます。

さらに「カリスマ営業マン(ウーマン)」ともなれば、友人・知人ははじめだけで、その後はその紹介を繋いで大いなる実績を挙げまくるのです。

そこには客観的な商品の良し悪しは二の次、というか考える余地がなく、紹介された一般消費者は「信頼できる担当者がヘンテコな商品を勧めるはずがない」と思い込んでしまうことになります。

もちろん、中には極めて適切な保険商品を提供している「カリスマ」もいると思いますが、そうでない大多数の「カリスマ」が問題です。

書店のビジネス書のコーナーには、相変わらず「営業のカリスマ」と言われる方々の著作が並んでおり、少なからず生命保険で成功された方のものがあります。

そこに書かれていることは、当然ですが「実績を上げるための心得や戦略、戦術」や「感動的な成功例」などで、あくまでビジネスをする側(=売り手)の側が真似したり参考にしたるする事柄で、一般消費者(=買い手)には全く関係ないことです。

つまり、どんな素晴らしい営業マン(ウーマン)から買おうと、駆け出しの研修生から買おうと、商品が適切でなければNGなものはNGなのです。

却って、駆け出しの研修生から買った場合であれば「本当にこれで大丈夫かしら」といろいろと調べて、セカンドオピニオンを得ることができて、確認や修正ができるかもしれません。

生命保険なんつうものは「死んだら・・」とか「入院したら・・」など超ネガティブなもので考えたくもないことだけど考えなければならない厄介なもので、その厄介な問題を心地よく解決してくれて、さらに個人的なネットワークで「あそこの歯医者さんは私のお客さんで腕がいいですよ」とか「今度ゴフルコンペをやるんで参加しませんか」などお節介を焼いてくれすまし、場合によっては仕事を紹介してくれます(多分同業になるでしょうが)。

今から30年ほど前であれば、どの保険会社でも保障内容と保険料がほぼ横並びでしたので、担当者の優劣がそのまま顧客満足に直結しましたが、特に1996年の金融の規制緩和以降、損保系生保の登場などにより競争が激化して商品の優劣がはっきりしてきました。

おそらく現状でも大多数を占める「営業のカリスマ」までいかなくとも「信頼できる担当者(少なくとも加入当時は)」から大手国内生保に加入した方は、最適なプランより多くの保険料の負担を余儀なくされ、<介護保障は65歳まで>など肝心なときに必要な保障がなくなってしまうかたちになっている可能性が極めて高いのですが、何事もなければそのまま継続してしまいます。

一部何かのきっかけで、保障内容に疑問を持ちネットで調べたり保険ショップに駆け込む方は、その呪縛から解けてよりよいプランに変えることができるかもしれませんが、まだまだ少数派です。

身も蓋もない言い方ですが、<信頼できる(と思われる)担当者だからと言って、適切な生命保険に加入できるとは限らず、適切かどうか検証することも事実上困難>ということになります。

前回の「マーケティングの上手さによる弊害」と今回の「信頼できる担当者の弊害」の根っこは同じです。生命保険の加入という入り口での思い込みで、最適な選択ができなくなってしまうことが多々あるのが現実なのです。

生命保険において「ネット専業だから最先端で保険料も一番安い」「長年の友達が損させるわけがない」という思い込みは、全てとはいいませんが、あまり良い結果をもたらすことはないようです。

他にもいろいろ書いています。
ご興味があればお立ち寄り下さい。

保険選びネット
http://www.hoken-erabi.net/seihoshohin/new_2005.htm                   <具体的な商品の比較など月一で書いています(ほぼ月末更新)>
特約なしとなったニッセイの商品についての考察です。

ヤフー知恵袋
http://my.chiebukuro.yahoo.co.jp/my/shigotonin38
<知恵ノートはほぼ月二で随時更新、生保関連の質問にも答えています>
ご指名の質問大歓迎です。

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