Facebook、自社公開データの信憑性について
Facebookが公開しているユーザー数が、昨日7億人を突破したことをブログ記事にて報告した。
・ Facebook、ついに7億人を突破 (2011/5)
この統計値はあくまでFacebook自社発表のユーザー数に基づいている。その正確性、信憑性はいかほどだろうか。よく質問をいただくことでもあるので、他の統計調査との比較で検討してみたい。
1. Facebook自社発表ユーザー数について
まず、このデータの基礎となっているのは、Facebookが、Facebook Adsの「広告ターゲット設定」をした場合に表示されるユーザー数であり、SocialBakersはその数値を元として、国別情報やデモグラフィック情報ごとに公開している。
Facebook自体、このユーザー数の正確性を次のようにのべており、保証できる数値として公表しているものではないことがわかる。(Facebookへルプ)
自分の対象ユーザー条件を満たすユーザーが何人いるかを見きわめる方法はありますか。
各ターゲット条件を選択すると、その条件を満たすおおよそのユーザー数が表示されます。この見積もりは正確ではないことに注意してください。このため、受け取るクリックやインプレッションの数が期待に添っていない場合は、対象の絞り込み制約が厳格すぎる可能性があります。この場合は、対象の絞り込み制約を緩和することを考慮してください。
なお、Facebookは去年まで、一定の節目で公式統計データ(Facebook Statistics) を公開していた。最終変更は2010年7月24日、その更新データは次のブログ記事で報告している。
・ Facebook最新統計を発表。MAU5億人、モバイル1.5億人 (2010/7)
この統計値は「アクティブ・ユーザーズ」となっており、一般的に月次アクティブ会員数をあらわす数値であることが明示されていた。これ以降、Facebookはこのデータを更新していないが、この数値とFacebook Adsで公開されていた数値とほぼ同期していたため、現在も広告用に公開されているユーザー数とは「月次アクティブ会員数」に相当するものであることが推定される。
ただし、SocialBakersのグラフを見てもわかる通り、この数値は正確に日次で更新されているわけではない。データ更新のタイミングが不定期であり、突然増加したり減少したりすることもあるため、その推移から傾向を読み取るテクニックが必要となる点に注意したい。
2. 他の統計データとの整合性について
続いて、Facebook自社統計値の信憑性を探るために、他のアクセス分析調査との比較を試みよう。そもそもアクセス統計サイトも推定値であり、一般的には自社公表数値の方が信頼性が高い。例えば「Google Trends for Web Sites」の基礎データは、Google検索データ、オプトインによる匿名のGoogle Analyticsデータ、オプトインの消費者データ、サードパーティーのマーケット調査データなど複数の情報源を組み合わせて算出されたもの(Google Trends Help)だ。したがって、あくまで参考情報である点に注意してすすめたい。
まず、全世界のFacebookアクセス状況は、Google Trendsによると次のグラフとなる。
2011年4月時点で、全世界の日次ユニーク訪問者は3.2億人強。Facebook統計では、月次訪問者の約50%が日次訪問者としているので、ここから月次ユニーク訪問者を推定すると約6.4億人。ほぼFacebook発表のアクティブユーザー数と5%程度の誤差で一致している。(Google Trendsでの日次ユニーク訪問者には、会員以外のアクセスも含まれているかどうかは不明)
さらに米国内のアクセスを見てみよう。
2011年4月時点で、米国の日次ユニーク訪問者は9000万人。Facebookは、米国では月次訪問者の70%は毎日訪問するとしているので、そこから月次ユニーク訪問者を推定すると約1.3億人。こちらはFacebook発表のアクティブユーザー数と15%程度の誤差がある。
米国内限定のアクセス状況であればCompeteも対応しているので、こちらの情報と比較してみよう。Competeでは2011年4月の月次ユニーク訪問者数を1.38億人としており、こちらはFacebook公表値と8%程度の誤差となっている。
最後に日本を。2011年4月時点で、日本における日次ユニーク訪問者数は160万人。世界平均と同じく50%が日次訪問者と仮定すると月次ユニーク訪問者数は320万人。こちらはFacebook公表値とほぼズレなく一致している。
なお、当ブログで紹介しているニールセン調査データによると、FacebookのPC月次ユニーク訪問者数は、2011年4月時点で約700万人に達しており、Facebook公表値を大きく上回っている。この差異についてはFacebookページなどオープンなページへの非会員のアクセス数値も対象としているためと推測している。
以上、Facebook公表値の意味と、他の統計データとの整合性を検証してみた。いずれも完全に正確なデータとは言えず、推測も多く含まれるが、Facebook公表値には一定の信憑性があると筆者は感じている。
出版業界の「公称部数」と「実売部数」と同様、Webサイトには「登録会員数」と「アクティブ会員数」があり、この差は非常に大きい。mixiは、それらをともに発表している数少ないサイトだが、彼らによると、2011年3月時点の登録会員数は2337万人、アクティブ会員数は1537万人、登録会員の66%がアクティブということだ。
他の多くのサイト、例えば、Mobage、GREE、Amebaなどは登録会員数しか公表していないし、Twitterにいたっては、たまに登録会員数などを断片的に公開しているのみだ。その数値は「公称部数」に近く、ほとんど実態をあらわしていない。その点、アクティブ会員数を公表している企業、Facebookやmixiは、広告メディアとして、その情報開示姿勢で評価されるべき企業と言えるだろう。
・追記
昨日、7億人を超えていたSocialBakers統計ですが、本日は1千万人程度減少して6.9億人となっています。何らかのアカウント停止等を実行したのかも知れません。Facebook公表値にこの程度の数値揺れは常にありますので、その点、ご了承くださいませ。
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