B2B企業のソーシャルメディア活用はIBMに学ぼう
IBMのソーシャルメディア活用は実にユニークだ。
例えばブログやツイッターの可能性には早くから着目し,社員の積極的な活用を推奨しているが,実はIBM本社を代表するアカウントやブログは持っていない。
最も多用しているツイッターを例にとろう。「IBM」で検索すると こんな感じ だ。日本IBMをはじめとする各支社や部門のアカウントはぞろりと表示されるが,そこに代表アカウントはない。
当社では,昨年二度にわたって世界のトップ・ブランド100企業のツイッター活用を詳細に調査したが,このような形態(積極的に社内奨励しながら代表アカウントがない)をとっている企業はIBMだけだった。
【日本IBM ツイッター・アカウント】
これはIBMが世界最大級のB2B企業であることに所以しているのだろう。ソーシャルメディアには企業と企業の交流を活性化させる機能はなく,あくまで個人と企業,個人と個人の対話・交流が基本となっているからだ。
特にIBMが積極的に推進しているのは社員同士のコミュニケーションで,全社をあわせると数千人がツイッター交流に参加している。またその対話は社外にも開放しており,提携先,顧客,メーカー,メディア,アナリストなどあらゆる組織や個人との会話にツイッターは利用されている。そしてそのほとんどは職務に関係するものだ。
IBMにとってツイッターは,無料で活用できる巨大なナレッジ・ネットワークと言えるだろう。そこでは社員と顧客の対話が緊密に行なわれ,社員間でも積極的なナレッジ交流が実現されている。全社ソーシャルメディア・コミュニケーションの責任者であるアダム・クリステンセン氏によると,IBMにおけるツイッター最大の貢献は「クラウ
ドソーシング効果」だとのこと。IBMは各分野の専門家の集まりであり,個々の社員間が緊密な情報共有をすることでIBM全体がさらにクレバーや知識集合体になったのだ。
では,このような活用を支えるIBMのソーシャルメディア・ポリシーはどのように定められているのだろうか?
■ IBMのSocial Computing Guidelines
IBMは,社員のソーシャルメディア活用に対するポリシーを 「Social Computing Guidelines」 としてまとめている。そして実はこの指針は,米国のソーシャルメディア先進企業にとってもお手本となっている優れた内容なのだ。
ガイドラインは全てIBM社員に向けて規定されているものだが,一般ユーザーにも公開されている。そのため,誰でもIBMが社員に対してどのような指導をしているかオープンに閲覧することができる。ではその概要をピックアップしてみよう。
●Introduction
(ポイントのみ) IBM社員は,ソーシャルメディアでの対話を通じて「信頼を得る」「学習する」「貢献する」ことを目指してとりくんでください。
●IBM Social Computing Guidelines: Executive Summary
1 服務規程の順守
Business Conduct Guidelines (IBM企業行動基準)に従ってください。
2 発言に対する責任自覚
あなたのプライバシーも公開されることを自覚して、責任のある発言をしてください。あなたがオンラインネットワークのなかでどのように存在したいかを想定してふるまってください。一人称で話してください。
3 企業との関係性の明示
IBM(会社)やIBM(会社)に関係する事案を議論する際には、実名、IBM(会社)との関係、役割を明示すること。また、初めて投稿する場合にはIBM(会社)を代表しているのではないことを明示してください。
4 免責事項の主張
外部サイトに投稿するときは、あくまで「発言が自分個人の意見であり、IBM(会社)を代表する意見でないことを明示」してください。ただし、マネージャや重役には免責事項は通用しません。個人的な意見でもIBM(会社)の意見とみなされます。
5 著作権の遵守・誹謗中傷の禁止
著作権、公平性、公表義務を遵守してください。
6 守秘義務の遵守
守秘義務。個人や内部情報を公表するときは許可を得てください。IBM(会社)の機密情報(財務情報、事業計画、行動予定等)を公開してはなりません噂には、ノーコメントとすること。肯定も否定もしてはなりません。
7 事前了解
許可なく顧客、パートナー、サプライヤーの情報を公開しないでください。リンクをはるときは、デッドリンクにならないか注意してください。
8 個人情報保護
読者に敬意を表する事。誹謗中傷やIBM(会社)の職場で受け入れられないような、発言を慎んでください。また他人のプライバシーや個人の政策や宗教など人の嫌がることないように考慮してください。
9 引用記事
誰かが公開した事項を引用する場合、その出所を明示してください。
10 発信情報のクオリティ
読者や同僚に敬意の念を、持ち続けてください。同僚や取引先からどのように見られたいかを考えてプロフィールやコンテンツを用意してください。付加価値をつけましょう。
11 ポストした内容の取り扱い
好戦的になってはいけません。投稿した直後以外は、過去にポストした情報は変更しないでください。
12 自己判断の基準
ベストな自己判断に心がけましょう。価値を高めるようにトライしましょう。価値のある情報や予測を提供しましょう。IBM(会社)のブランドはあなたの情報発信により影響を受けます。
13 日常業務との関係性
日常業務をおろそかにしないように。
またこれらは動画(下記画像をクリックすると閲覧できる)でも紹介されている。
これだけ多岐にわたる内容が,必要十分な形でシンプルな13箇条にまとめられている点には驚かさせる。
日本でも先日,大企業で初となるソーシャルメディア・ポリシーをNECが発表したが,ツイッターの普及に伴い,この流れは加速していくだろう。このIBMガイドラインはあらゆる企業のソーシャルメディア・ポリシーのお手本となる素晴らしいと言えるだろう。
ちなみにこのIBM Social Computing Guidelinesの要約は,当社副社長である福田のブログ(最近ひっそり始めました)より引用したものだ。さらに詳細については,ぜひ彼のブログ記事を閲覧してほしい。
・ 福田浩至ブログ Appendix
【追記】
オルタナブロガーの先輩で,日本IBM広報でいらっしゃる栗原氏よりブログ記事にてご紹介をいただくとともに,日本語版のIBM Social Computing Guidelines を好評いただきました!こちら全文が完全な日本語で掲載されています。とても素晴らしい内容なのでぜひご覧ください。
・ IBMソーシャル・コンピューティング・ガイドライン<日本語版>
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