オバマ大統領がオウンド・メディアで国民と対話した日
オバマ大統領とそのチームは,民主主義においてソーシャルメディアがキラーツールとなりうることを深く理解している。
彼らが大統領選においてFacebook共同創業者のChris Hughes氏を参謀に迎え積極的なソーシャルメディア展開をしたのは有名な話だが,先週の一般教書演説におけるソーシャルメディア活用は,さらに大きな一歩を踏みだした注目すべきものとなった。
それは,政治指導者が,自らのオウンド・メディアを持ち,国民と直接的に対話するという,歴史的ともいえるコミュニケーション・アプローチだ。
■ 一般教書演説を,あらゆるソーシャルメディアに直接配信
これまでもオバマ大統領は,FacebookやTwitter,YouTubeと多くのソーシャルメディアを有効活用してきた。またブロードキャスト型ではあるが,CNN.comでライブ配信された大統領就任演説では,なんと1390万人が同時視聴したと言われている。
それに対して,今回の一般教書演説では,ホワイトハウス・ページを旗艦とし,そのストリーミング動画を組み込むことで複数サイトからライブ配信されているのが特徴だ。
・ ホワイトホウス・ホームページ
・ YouTube上の「CITIZENTUBE」ページ
・ Facebook上の「Whitehouse」ページ
その他,Hulu,Ustream,CNN,the Huffington Post,Blogher.com,C-SPAN,MobiTV等から個人ブログにいたるまで,多様なサイトを通じてロングテール配信されたのだ。さらにiPhoneアプリ The White House まで提供するという用意周到ぶりだ。
1月27日当日のライブ配信数は130万人。一般教書演説をテレビで視聴した人数4900万人と比較すると少ないとも言えるが,政府からの直接配信視聴者数としては画期的なものと言えるだろう。
ちなみにこの配信状況も,翌日にホワイトハウス・ブログで直接国民にメッセージされた。
・ Your Response to the State of the Union (The White House Blog, 2010/1/28)
■ 演説に対する国民の質問に,オバマ大統領本人が直接回答
中でも活気的だったのは,YouTube 「CITIZENTUBE」 における双方向アプローチだ。ライブ演説の中継中に,この専用YouTubeチャンネルには約4万人の視聴者から約1万件の質問が寄せられ,それに対して約47万件のGood/Bad投票が行なわれたのだ。
そして,今日の早朝(2月2日,日本時間でAM 3:45),やはりYouTube「CITIZENTUBE」チャンネルにて,国民からの質問に直接返答するオバマ大統領のライブ放送が配信された。
Mashableなど複数メディアによると,今日のライブ放送で返答すべき質問(寄せられた質問から厳選されているのだが)は,あえて大統領に事前には見せないように厳格に取り扱ったとのこと。またピックアップされた質問のうち多くはビデオ投稿を伴ったものだ。
・ Obama Answers Questions Live On YouTube Today (2010/2/1)
実は筆者もリアルタイムにこの中継を見ていたのだが,上記のような配慮があったため,実際に国民がテレビ画面を通じて質問し,その場でオバマ大統領が返答するという(タイムラグによる擬似性はあるものの)臨場感あふれる国民との直接対話が演出されていた。
放映自体は約40分,多くの質問に次々返答するオバマ大統領の真摯な態度に,新しい指導者像を感じた人も少なくないのではと思う。またこの放映中にも多くの質問や投票が寄せられ,番組終了時点では13万件を超える国民の声が集約されていた。
民主主義においてメディアの果たす役割は極めて重要だ。強大なペンの権力を持つトラディショナル・メディアに対して,国民と政治家が個々にオウンド・メディアを持つことで,それぞれが牽制しあい,正しい情報が広く早く伝わる時代になっていく。
オバマ大統領の現在おかれている政治的立場は決して楽観視できる状態ではない。それは日本の民主党も同様だ。そんな中で果敢に国民との対話を一歩一歩すすめていく大統領の姿勢は評価に値するものだ。日本にも,早くこのような開かれた風が吹くことを期待したい。
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