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ソーシャルメディアのクチコミ動線をどう設計するか

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前々回の<a>ブログ</a>では,クチコミパワーの復活による新しい生活者の購買行動プロセス "AIPUT" を提示した。

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【ソーシャル時代の購買行動プロセス AIPUT】

具体的な行動パターンは次のようなものだ。

1.Awareness    TV番組かCMか新聞かネットか何かで刺激されて,デジカメの買い替えを検討しはじめる
2.Inquiry    ネットで検索。スペック,クチコミ,価格感等を,様々なページを往復して綿密に調査する
        気になるページはブックマークで記録。結局,一番人気の「Panasonic Lumix」に決める
3.Purchase    複数ショップを比較し,送料も含め最も安くてサービスの良い店から購入する
4.Use        体験し,使用感を得る ~ 「感動した」 「満足した」 「不満を感じた」 「怒りを感じた」など
5.Tweet    ネットでクチコミする ~ 「感動した」「怒りを感じた」など強い印象は書込比率が高い

AIDMA時代と最も変化したのは,Inquiry局面におけるユーザーの調査能力とその効率性である。生活者はネットを活用し,驚くほど緻密な分析能力で「良くて安い商品」をすばやく探しあてている。この源泉となっているのが商品体験のクチコミ(Use体験のTweet)だ。この際にツールとして活用されるサイトを機能分解すると次のようになる。

機能調査    企業サイト,コマースサイト
評判調査    クチコミサイト,ブログ,SNS,Realtime Stream(ミニブログ),ソーシャルブックマーク,動画投稿サイト
価格調査    クチコミサイト,コマースサイト
情報ストック    ソーシャルブックマーク

ここで重要なことは,「機能」と「価格」は企業サイドがコントロールできるが,「評判」はコントロール不可であるということだ。「評判」は顧客の感情と密接に結びついており,今まで以上に,顧客の事前期待を上回り感動を与えられるような商品開発,サービス開発が大切になってくる。そしてもう一つ,見落とされがちだが,同じぐらい重要なことは,その使用体験を「いかに生活者に効率的にクチコミしてもらうか」ということである。その体験談がInquiry局面にフィードバック(Social Feedback)されることにより,バイラルが生まれ,大ヒット商品につながっていく。

しかしながら,実際のマーケティング現場を見てみると,マスメディアを核として,企業ホームページ,ブログ,最近ではSNSやTwitterなどと,場当たり的にツギハギ対応している企業がほとんどだ。顧客との最高のタッチポイントであるリアル接点との相乗効果も薄い。そもそも各メディアごと,担当部門や業者が異なる上に,相互で交流がなく断絶しているケースがほとんどだ。これでは企業からのメッセージは適切に届かない。生活者のクチコミ伝達が非効率となってしまうのも自然の理と言えよう。

重要なことは,統一されたコミュニケーション・ストーリーのもと,マスメディア,ソーシャルメディア,リアルの場をすべて有機的に統合し,新しい顧客行動プロセスに合致した顧客コミュニケーション・システムを構築することである。

では,どのようなメカニズムで,理想的な「顧客コミュニケーション・システム」をデザインすれば良いのだろうか?

■ソーシャルメディアをいかに統合するか?

筆者が考えているのは,多様なメディアを有機的に結合した,次のような顧客コミュニケーション・システムだ。

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【ソーシャルメディアを有機的に結合させた顧客コミュニケーション・システム】

では局面ごとにポイントを説明していこう。

1)
Awareness 「商品を知る」
マスメディアとリアルイベントがAwareness局面の基本だ。「マスメディア」からは「検索エンジン」に誘導する。また「リアルイベント」においては「ブログ記事」および「Twitterつぶやき」が多く発生するようできる限り配慮する。今やTwitterは,googleに続きウェブサイトへの流入経路ナンバー2となっており,すでに強力なメディアに成長している。特に,IT事業者,ベンチャー企業,イノベータへのリーチ媒体としては大変に効果的だ。また8月からmixiアプリがスタートしたが,このSNSアプリをトリガーとしてSNSから企業サイトに誘導する事例もこれから増えてくるだろう。

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【最も信頼できるサイト】

2)Inquiry 「商品を調べる」
「インターネットとクチコミに関する調査」(第二回MSN生活者アンケート 2008/1/22)によると,ユーザーの企業サイトへの信頼度は引き続き高いレベルにある。そこで企業サイトを基軸として,ブログや多様なクチコミサイトでの記事やQA情報など(googleブログ検索やRSSフィードを用いて)該当商品に関するネット上のクチコミを集約させる仕組みが効果的だ。またブランドコミュニティを併設することで,言いっぱなしのクチコミで終わらせず,顧客の声を商品サービス改善に取り入れる商品サービス開発のフィードバックループを構築したい。この継続的な顧客コミュニケーションは,顧客と自社間の信頼関係を高め,結果的にロイヤルカスタマーの育成につながってゆく。ただし企業のプライベートなコミュニティ構築の難易度の高く,特に企画運用段階で十分な配慮が必要である。

顧客コミュニティ構築のノウハウは,こちらの当社ホワイトペーパーを参照してほしい。
Looopsホワイトペーパー vol.5 『顧客向けプライベートコミュニティを成功させる7つの秘訣』
http://www.looops.net/whitepaper/looops05/

3)Purchase 「商品を買う」
リアルショップ,企業内コマース,一般のコマースサイトが購入の場だ。特に企業コミュニティと連動させた「ソーシャルコマース」サイトは,顧客との関係性を継続強化するのに効果的だ。その際のポイントは,(1)シングルサインオンによるシームレスな顧客動線の提供 (2)コミュニティとコマースのポイント連動 (3)売れ筋ランキングや評価ランキングによるヒット商品の案内 (4)顧客の声を商品開発に反映させるためのアンケートや共同開発プロジェクトの実施 (5)購買履歴とクチコミ・テキストマイニングをクロスさせた顧客分析 などである。こちらもコミュニティとコマースの有機的な結合を十分に配慮することが肝要だ。

4)Use 「商品を使う」
ソーシャル時代における最も大切な顧客とのタッチポイントだ。顧客の事前期待を上回る商品開発やサービス提供に十分配慮したい。これには前述の「顧客の声を取り入れた商品サービス開発のフィードバックループ」が重要となる。商品使用時の感動ないし失望の幅が大きいほど,顧客のクチコミ発生率は高くなる。

5)Tweet - ReTweet 「商品をクチコミする」
商品体験が多様なソーシャルメディアにフィードバックされ,Inquiry局面の評判調査に大きな影響を与える。これが新しい時代の象徴,"Social Feedback"だ。フィードバックを企業が防ぐことは不可能だ。むしろ自社商品のクチコミを促進し,かつInquiry局面で多くの見込み客の目に触れるよう,積極的な企業姿勢を示すべきである。悪い評判についても誠意を持って対応し,商品サービスに顧客の声を速やかに反映させることで,マイナスをプラスに転じさせる。これにより顧客との信頼の絆がより強固なものに成長してゆく。多様なソーシャルメディアへワンクリックで書込みできるようボタンを配置するとともに,顧客評価やアンケートのマスメディアへのプレスリリース,店頭でデジタルサイネージ表示や携帯連動など,多面的に顧客クチコミを促進し,顧客の目に触れるようにすることが肝要だ。

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【生活者とのエンゲージメントを築く 「360度マーケティング」 のコンセプト】

このチャートは,マスメディア,ソーシャルメディア,リアルの場を統合した「360度マーケティング」のコンセプトをあらわしたものだ。ここでコアになるのは,企業サイトおよび連動したブランドコミュニティであり,そこには統一されたコミュニケーション・ストーリーが必須となる。

このような顧客コミュニケーションを実現するために,企業はマーケティングに関する組織やプロセスを再構築する必要がでてくるだろう。競合企業より早く新顧客コミュニケーション・システムを構築し,顧客と自社との強固な信頼の絆を築くことは,経営戦略上においても極めて重要なこととなるはずだ。

なお,この内容は,当社ホワイトペーパー『ソーシャルメディアをフル活用したクロスメディア・コミュニケーション』(2009/8/20第一版)をベースにしている。
http://www.looops.net/whitepaper/index.html

ご興味ある方は参考にしてほしい。

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筆者Twitterはこちら。ご意見,コンタクトなどお気軽に。     http://www.twitter.com/toru_saito

Comment(2)

コメント

seed

たしかにBizとしても
面白い使い方ができるようですね。
最近はソーシャルメディアもいろいろ
できているみたいですし。
リアルという意味では「遊び」をインクルードする意味においては携帯サービスの「らいぶ茶」など有望ですね。

seedさん,コメントありがとうございます。

「らいぶ茶」は非常に面白いですね。これから,ネットとリアルの融合とともに,ビジネスと遊びの境界も薄くなって,今まで以上にエンタメ要素が大切になると思います。

リアルとネットをつなぐ道具としてはPCは不向きで,24時間30cm以内といわれる「携帯」と,顧客接点の瞬間を捉えられる「デジタルサイネージ」が主役になってくるでしょう。

多様な端末やメディアを活用し,クチコミの動線を作り,ユーザーの評判をしっかり伝えることが大切だと考えています。

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