ゲーミフィケーションは世の中に良い影響を与えるか
先日、ゲーミフィケーションについてのワールドカフェに参加してきました。
主催は、Facebookページ「ゲームのちからで世界を変えよう会議」を運用されているNoahさんと、ワールドカフェの運営やファシリテーションが非常に上手いライフネット生命の吉沢さん。
■ゲームのポジティブな要素を現実世界に取り入れる
Noahさんは、ゲーミフィケーションの定義をこう紹介されています。
ゲームのポジティブな要素を現実世界に取り入れ、ヒトを活性化し、生きる力を取り戻すための知恵
ゲームというと、僕らファミコン世代は悪い印象は持ってないですが、親の世代はあまり良い印象を持っていません。また最近ではオンラインゲームやソーシャルゲームの流行で、お金を使い過ぎることや、企業もコンプガチャ問題など、社会的なイメージもよくありません。
しかしNoahさんの定義では、下図の①の領域、つまり遊びの面白さを社会に役立たせようと言うのです。
確かに社会に役立つことをするのに、しんどい辛いことをするよりも、楽しい方が良いに決まってます。ゲーミフィケーションという言葉の印象だけでマイナスイメージを持つのではなく、社会に役立つことを多くの人に楽しんで参加してもらえるように学ぶことはNPOも企業も政府も、地域や家庭でも大切なことではないでしょうか?
例えば、事例で紹介されていた1つにフィンランドの国立図書館のケースがあります。図書館の膨大な蔵書をデジタル化した際に、大量の文字の中からスキャンミスを発見するのに莫大な人件費と時間がかかってしまう。それを、ゲーミフィケーションを活用して、何と9万人以上のボランティアを集めて解決されました。
彼らは、スキャンミスの発見をゲームにしたのです。そのゲームは、レミングスというモグラみたいなキャラクターが右に歩いていきます。途中で崖があり、このままいくと落ちてしまう。落ちないようにプレイヤー現れた文字を打ち込むと橋ができ、向こう岸に渡れる。読めない文字が出てきたときにPASSボタンをクリックすることで、その文字が読めないことが図書館のサーバー内にたまっていくという仕掛けです。記事がGreenzでも紹介されています。(100年前の新聞をみんなでデジタル復刻!フィンランド国立図書館のオンラインゲーム「Digitalkoot」)
Noahさんのプレゼン資料は下記スライドシェアに紹介されているので興味のある方はぜひご覧下さい。
■ゲームのちからの4要素とは?
Noahさんの資料に紹介されていますが、TEDでJane McGonigal氏がゲームのちからについて4つの要素を紹介されています。
1.Urgent Optimism :「成功への希望はあるか?」
成長しているという実感があること。例えば、レベルアップなど。小さな成功だけでなく、失敗も楽しんで経験する。ゲームオーバーですら楽しい。
現実世界では、小さな成功や失敗しても良い環境があるだろうか?
2.Social Fabric:「ゲームにおいて、人は強固に結び付けられる」
パーティーを組んだり、協力プレイをしたり、一緒にクエストにチャレンジすること。ゲームの中だけでなく、チャットや攻略掲示板で助け合いながら情報交換している。
日々お金が動機ではないところで、楽しみながら同僚や仲間と関係は作れているだろうか?
3.Blissful Productivity:「人間は本来、生産性を喜びとする」
自分が何を成し遂げ、何に影響したのかが見える。レベルが上がった喜び、クエストを達成した快感。
今自分が取り組んでいることは、誰のどんな役に立っているかわかっているだろうか?生産性が高い状態へと改善されているだろうか?
4.Epic Meaning:「何か壮大な目標に向かっているか?」
最強のボスを倒し、お姫様を救い出す。誰も更新できなかった新記録を樹立する。
いつも目の前のこと(=what)や、その手段や方法(=how)しか考えていないだろうか?そもそもそれは社会においてどういう意味がありなぜ(=why)取り組むのかわかっているだろうか>
ゲーミフィケーションについての書籍は何冊か出ているので、具体的な事例やHow to は下記を参照下さい。
■ゲーミフィケーションとフロー理論
次に、フロー理論の解説の第一人者の吉沢さんから、ゲーミフィケーションとフロー状態になることは非常に似ていると紹介がありました。フロー理論については、はてブ2300以上ついている吉沢さんのブログを参照下さい。(「フロー体験」理論のあまりの凄さに戸惑いを隠せない:YLOGオルタナティブ)
吉沢さんは、フロー状態のことをこう紹介しています。
自分の心理的エネルギーを100%、1つのことに注ぎ込み続けている状態のこと
この時間が長ければ長いほど、人は幸せに感じるそうです。そして、圧倒的な成長と成果を残すと。
このフロー状態になるために、下記4つの条件があると言います。
1.適切な難易度
2.相互作用(恊働/競争)
3.自己統制感(実感/手応え)
4.熱中対象への確信
そしてその4つが見事にゲームのちからの4要素と当てはまっているのではないか?と指摘されていました。
ゲームの世界では、こうしたゲーミフィケーションの要素にはまり、熱中状態になりやすいのに比べ、例えば目の前の職場ではなぜ導入しにくいのか?ゲームだと何度失敗してゲームオーバーになってもチャレンジできるし、リセットしてゼロからチャレンジすることもできます。
一方、現実世界ではすでに出来上がったシステムがあったり、環境が整ってしまっており、変化させることが難しい。何度も試行錯誤できる場が構築しずらく、フロー状態になりにくい傾向があります。
現実世界に何度もチャレンジできたり、リセットできる環境を作ることができればいいけど、難しければ仮想空間と現実世界を組み合わせて、ゲーミフィケーションを活用できないものだろうか。
吉沢さんの資料は下記スライドシェアでアップされています。
■ゲーミフィケーションを社内に導入する
会場には40名弱の方が集まり、メインのゲーミフィケーション・ワールドカフェを楽しみました。主催者のライフネットの吉沢さんはワールドカフェの実践方法も本番で使える資料付きでブログで公開されていてるので、興味のある方はご覧下さい。
(YLOG:【詳しいやり方が分かる】ワールドカフェ実践マニュアル )
ワールド・カフェで同じテーブルになった方で、株式会社シンクスマイルという会社が、ゲーミフィケーションの仕組みを社内で導入しており、非常に面白かったので紹介させて頂きます。
シンクスマイルの10の行動指針(バリュー)をもとに、少し遊びゴコロも加えて、15の『バッジ』を設定。社員同士がお互いのいいところを見つけ、「これを実現したね」という仲間にWEB上であげるシステムです。
(そのバッジ獲得数は昇給や昇進に反映されます)
行動指針となるバリュー(定性)とバッヂ(定量)を組み合わせているのが非常に面白いです。社員は毎月20個(上司は40個)のバッヂをお互いに送り合うのでとにかくフィードバックが早い。そして、自分の日々の活動がどのバリューにあっていて、他のメンバーがどのバリューに貢献しているのかが見えるようになっています。
しかも、Facebookと連動していて、社外の人も参加でき、バッヂを1つ送ることができます。僕も翌日送ってみましたが、数分でFacebookの方に返事が来ました。
数字だけの評価でもなく、何十もある評価項目から年に1−2回上司が一方的に評価する人事考課ではなく、こうした会社として大切にしている行動指針を、360度評価で、フィードバックを多く・早くできる仕組みを社内に導入されています。それをFacebookと連動することで社外にも公開・参加できるようにされています。
以上、ゲーミフィケーションについて、僕自身ちょっとソーシャルゲームのマイナスイメージも最近は持ちつつありましたが、図書館の事例や社内に導入している事例を聞いていると、教育や地域活性化、政治など様々な分野で可能性があると思います。
そしてゲームデザイナーがゲームを作るだけでなく、それら様々な分野に参加することで、もっと現実社会は面白く、良くすることができるのではないでしょうか?
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