「こいつ、セキュリティ意識が低いな」という人に読ませたい『デジタルの作法』
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『Business Media 誠』で宮田健氏が連載中の「半径300メートルのIT」を書籍化した『デジタルの作法』(角川EPUB選書)。スマートフォンや『Twitter』『Facebook』といったソーシャルメディアが普及して、それほどセキュリティ意識が高くないユーザーが増えている現実もあり、何が危ないのか理解する上では格好の教科書となっています。
本書でまず重要なのは、ウイルスをばら撒いたり、個人情報を抜き取ろうとする攻撃者の動機を明確にしていることでしょう。
『トロイの木馬』のようなウイルスを作るハッカーは、政府や大企業を混乱に陥れて自身の技術を誇示する愉快犯だという印象を持ちがちですが、現在では各ネットサービスのログイン情報、もっというとネットバンキングのID・PASSやクレジットカードの情報を、ユーザーに気づかないうちに抜くことを目的にしているといいます。ウェブメール(gmailやWindows Liveメールなど)のID・PASSを盗むウイルスを潜伏させて、ネットバンキングのワンタイムパスワードを知らせるメールをもとに、不正な送金が送られてしまうといった事例もあって、知らず知らずのうちにクリックしたメールやアプリが、実のところそういった情報を盗む輩の仕業かもしれないわけです。
まずは、ここで推奨されている「OSは常に最新に」「セキュリティソフトはお店で買う」「ウェブブラウザも最新に」というところからセキュリティ対策をはじめたいところです。
また、空港やスターバックスのようなカフェなどでついつい使ってしまいがちな無料Wi-Fiの「危なさ」も指摘されています。提供されているWi-Fiが暗号化されていないため、他者がアクセスできてしまうリスクが生じます。例えばソーシャルメディアのアカウントが乗っ取られる、といったケースも起こりえます。ほとんどのデバイスは、接続時に「このWi-Fiは暗号化されてません」といったアラートを出すようになっているので、まずはアクセスしないというのが一番の解決策ですが、本書で紹介されている個人用VPNサービス『Hotspot Shield』をインストールして対策するというのもいいでしょう。
ほかにも、画像をソーシャルメディアに投稿することによって位置情報が分かってしまうと、ストーカー被害に遇う確率がグンと高まったり、知らないで済まされない事が本書ではまとめられています。また、どんなに対策をしたとしても、身近な人やソーシャルメディアでつながっている人から自身の情報が漏れてしまう可能性もあります。個人的に『Facebook』にアップされた画像にタグ付けする人はセキュリティ意識に不安があると感じますが、だからこそより多くの人がPCやスマホの防衛手段を知って対策を「しなければいけない」と認識することが大事なように思います。
そういった意味でも、本書は「画面ロック? なんか面倒だな」という人ほど読んで頂きたいな、と感じます。お堅い一辺倒ではなく、使わなくなったスマホを『Skype』で外出先から自宅の猫をチェックする用にするといったユニークな話もあって、PCに疎い人や年配の方でも読みやすいのではないでしょうか。「セキュリティ意識が低いな」と感じる身近な人に贈るというのも良さそうです。
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