電子マネーにまつわる疑問(3)サービスに合わせた電子マネーを選ぶ
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電子マネーについて、利用者側・事業者側の素朴な疑問をミスター電子マネー 岡田仁志さんにオプンラボ コバヤシが聞く第3回目。
食品などのネット販売の場合
オプンラボ 小林:具体的な電子マネーの活用について教えていただけますか?多様な電子マネーがありますが、どのようなサービスにはどういった電子マネーや決済手段が適しているか、サービス提供側が選ぶ基準などを伺いたいと思います。
まずは、食品などをネットで販売する場合は何がオススメですか?
国立情報学研究所 岡田:この場合は代引きでも決済ができる電子マネーを選ぶとよいでしょう。
日本のECでは、商品を届けた時に代金を受け取る「代引き」という支払い方法がよく利用されています。食品のネット販売も同様ですので、電子マネーを選択する際には、ネット決済だけでなく、代引きでも利用できるものを選択します。大手の宅配業者のハンディ端末では、ほとんどの電子マネーを代引き用に受け取ることができます。
小林:え!そうなんですか。
代引きというと現金で支払うイメージですが、電子マネーでも決済できるのですね。
岡田:利用する宅配業者のメニューに従って、なるべくエリア内で代引き用の利用率の高い電子マネーを選ぶとよいでしょう。
小林:試しにクロネコヤマトのサイトを調べてみましょう。
確かにEdyやWaon、nanaco、Suicaなどで決済ができることが記載されていますね。そして、EdyやWaon、nanacoは全国で利用できる一方、Suicaは一部のエリアでは利用できません。商品やサービスによっては利用できるエリアまで考えておいたほうがよいわけですね。
電子マネーで支払うことができると、ポイントを貯めている人にとっては一層魅力的です。「しまった現金が手元にない!」という場合にも便利ですよね。でもそういう時は電子マネーにもお金を入れていないかもしれません。私の場合は。
セミナーの参加費の場合
小林:オプンラボでも試行錯誤しているのですが、セミナーなどの参加費をネット決済をする場合には何を利用するとよいでしょう?Webサイトで参加者を募集し、申込フォームで申し込んだ後、手間の少ない形でオンライン決済できればと思っています。
岡田:PayPalをはじめとした送金サービスを利用するとよいでしょう。
「資金決済法」が施行され、いままでグレーゾーンにあったネット上の送金サービスが正式に法律で認められました。PayPalに加え、さまざまな電子送金サービスがスタートしています。これらの送金サービスは、リアルな店舗を構えない、イベントの主催者が参加費を受け取る手段などに適しています。
小林:よかった。いまPayPalを利用しています。クレジットカードの決済サービスを利用することも考えたのですが、小規模で小額の参加費のため、コスト面があわずにやめました。ただ、PayPalもまだ利用する人が少ないようなので、銀行振込も併用しています。
リアルとネットの連動
小林:洋服などのECとリアルの店舗の決済を連動させて、しかもポイントを加算する場合は何が良いでしょう?
岡田:電子マネーの加盟店になることを検討してみるとよいと思います。
アパレルなどの決済金額の高い店舗では、多くがクレジットカードの加盟店です。これに加えて、消費者の選択肢を増やすために電子マネーの加盟店となるのも一つの選択肢です。
店舗ではツールを用意すれば電子マネーで決済できます。また、ECにおいては、クレジットカード情報をネットに流すことに抵抗感のある消費者がいるので、電子マネーという決済手段を用意しておけば、そのような人たちにもEC上で購入してもらうことができます。
小林:ポイントは一緒に貯めることはできるのですか?
岡田:リアルの店舗とECに共通した会員番号を付与することで、ECとリアルの店舗の決済を連動させ、ポイントを加算できます。
FeliCaポケットというアプリケーションを導入すれば、ポイントやクーポンなどの機能をFeliCaカードに簡単に搭載することができます。
小林:FeliCaは普及しているのもあり、ツールやアプリケーションが充実していますね。EC、リアルの商品(セミナー)のネット決済、ECとリアル店舗という3種類の電子マネー・決済について整理できてすっきりしました。
そして、さらに追加質問です。
今やどこの店頭にもあるクレジットカード決済のオンラインシステム「CAFIS」と電子マネーを比較してどう思いますか?
岡田:電子マネー通な質問ですね。
小林:いえいえ、それほどでも。(つい最近聞きかじっただけ)
岡田:クレジットカード業界では企業を超えて「CAFIS」という業界標準を押し進め、店頭にはクレジットカード決済ができる共通端末が設置されました。
後から登場した電子マネーについて、クレジットカード業界の人は、端末が共通化するのかどうかに関心を持ちました。
結果、レストランのキャッシャーには見事に電子マネーのリーダ・ライタがずらりと並び、さまざまな業態の電子マネーがそれぞれ得意とするマーケットに参入し、創意工夫をこらしてユーザを伸ばしていきました。それこそが、日本の電子マネーが発展した原動力であったと、私は思っています。
小林:何やらパワーを感じる話ですね。
岡田:ヨーロッパでは、政府の主導のもとに全ての銀行が参加する電子マネーの実験が行われましたが、規模の大きさとは対照的に、ドイツでもフランスでも大きな市場は得られませんでした。
小林:ヨーロッパで電子マネーの普及が進んでいないというのは知りませんでした。
岡田:日本では一見すると効率的とはいえない状況が出現しました。しかし、それは決して無駄ではありませんでした。ほとんどがFeliCaという同じ技術を採用していたので、次第に電子マネー相互乗り入れが進んでいきました。
日本の電子マネーは、1社の力で伸びるところまで伸ばして、市場の要請があれ自由に変化(へんげ)するしなやかさを持っていたのです。
小林:おまけに質問した回答が、思いがけず面白い展開になり、聞き入ってしまいました。メーカーはひたすらいいサービスを提供する、利用者は便利さを追求する、便利であれば積極的に利用する、そして日本で電子マネーが普及したのですね。
(オプンラボ 小林利恵子)
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