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悩める中小企業経営者に向けて、ITと経営をいっしょに食べてやさしく噛みくだく試み

非常時のシステムこそ有効なシステムになるという仮説

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そこそこの規模以上の企業は、5年以上のスパンの長期戦略があり、3カ年計画があり、年毎の目標と部門ごとの戦術があります。
長期戦略が、企業の骨の部分で、微調整はあっても大きな変更はせず、3カ年計画は毎年環境に応じて修正を繰り返し、それを実行する年度の戦術はダイナミックに変更するのが当たり前のようになっています。

しかし、情報システムにおいては、長期も短期もなく(年度予算はありますが)何を構築してもイニシャルと5年分の保守費用で5年リースをかけて5年間そのまま使うことを前提に構築している例が多く見られます。

しかし、情報システムは企業の戦略・戦術を実行することを支援するものであり、毎年変わる戦術に対してシステムが替わらないと考えるほうがおかしな話です。
サイボウズがクラウド戦略で提唱する「ファストシステム」のコンセプトもそんな背景から来ています。
右肩上がりの成長の下では、大きな戦略変更をせずとも、前年やったことの改良版をより効率的に行えば利益は上がったものですが、停滞、もしくは赤字になっている環境では、同じことを繰り返すのは自殺行為です。

私は、3月の震災後に被災地の企業を回っていろいろと取材していますが、急な環境の変化に対応するため、それぞれの企業では大胆な計画変更や行動の変化がありました。

通常、非常時の計画はBCPで策定され、その計画に則って復旧を目指します。BCP(事業継続計画)では、「発動」、「業務再開」、「事業回復」、「完全復旧」の4フェーズに分けられて、計画が作られますが、元の業務に完全に戻すことを狙った計画が多いのに比較して、実際に被災した企業の話を聞くと元と同じ業務ではなく、想定外の業務がたくさん出てくることがありました。

BCP「発動」の時点で、情報システムについては計画というよりバックアップや冗長化、クラウド化に焦点が当たります。震災後今まで騒がれたBCP熱はここに焦点が当たっていました。

少し熱が冷めてきたと思える今になって改めて思うのは、実は「事業回復」フェーズでのITシステムの役割です。
災害前と全く同じ業務が回せればいいのですが、現実にはそうはいかないのです。
例えば、サイボウズユーザーのある不動産業の会社の場合、まずは全てのお客様の不動産状況の確認という業務が発生しました。そしてその次には想定もしていなかった仮設住宅や借り上げ住宅の調整、大勢の住民の避難などに伴う急な引越しなど、発生した業務の量も物件の種類も、通常ではありえない状態となり、それが数カ月間続きました。

数カ月間社員はほとんど休みが取れず、会社に寄ることすら難しい状況が続く中で威力を発揮したのが、柔軟な情報システムと外部からのアクセス環境です。
基幹システムにあるデータは外からのアクセスができないため、GUI画面から誰でのWEBデータベースが作れる「サイボウズ デヂエ」にお客様データの一部を移行、また行政からの委託を受けた借り上げ住宅の調整にもデヂエを使った臨時のデータベースを作成し、役所から送られてくるデータを流しこんで迅速な手配を行っています。
これらはグループウェアと一体で運用されているため、通知やフローチェックなどもグループウェアの中に組み込まれ、迅速な対応を支援するばかりではなく、休日もとれない忙しさの中、対応の漏れや抜けを防いでくれたといいます。

震災時の例はやや極端ですが、極端に環境が変わったからこそ、情報システムもダイナミックに変われたのかなと思います。
変わろうとする会社や組織に対して、それを支援するはずの情報システムが、逆に変化を阻害する要因になっている例を見るたび残念に思うのですが、企業としてある種の思いやりのつもりで設けている戦略変更の猶予期間が、逆に「嵐をやり過ごせば変わらないくてもいいや」という意識に繋がっているなら残念なことですね。

「クラウド」といえば「冗長化」とか「管理不要」の面で検討するシステム管理者の方は多いと思いますが、「可変性」という視点で検討したほうが、よりクラウドの本質を捉えた導入ができると思います。


※サイボウズのクラウドサービス「cybozu.com」がリリースしました。よろしければ一度おためしください。

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