良質な「場」が企業を作る
先週のITproEXPO2011では、最終日にスペシャルセミナーとして、岩手県建設業協会の方においでいただき、私の方で震災時どういう状況で復旧活動を行い、グループウェアを活用したか対談させていただきました。
大勢の立ち見が出るくらいお客様の興味も高かったのですが、対談していて思ったのは「場」という概念です。
「場」は英語では「BAマネジメント」とも呼ばれる日本発の経営理論で、簡単に言うと社員の行動を決めるためのコミュニケーションの中心地です。
10人を超えた会社では、経営者は全社員にすべての指示を行うことはできません。経営者の指示は誰か、もしくは掲示板やグループウェアなど直接ではない手段を通じて、社員に伝えられます。
しかし、社員はその言葉通りに行動するとは限りません。
そのときの間接的手段には、間に入る上司の解釈やお客様からの要求、そして同僚の行動などの要素が混ざり、社員はその「場」の状況を総合的に判断して、現在の行動と将来のための学習を行うというものです。
経営トップが「うちはお客様中心主義」という言葉を発しても、「場」の中で上司が「サービスより売上」と言ったり、お客様からのクレームが頻発している状況では、総合的に社員は「ああ、違うんだな」と感じ、その「場」の雰囲気に沿った行動と学習をします。
日本企業の場合、特にこの「場」から社員が情報を得るという傾向が強いようです。
「場」は特別なものではなく、多くの場合自然発生的に生まれます。
それは昔なら職場の机の並びの間で発せされる会話であったり、夕方のミーティング後の雑談であったりします。
岩手県建設業協会の震災後のグループウェア活用は、「場」がすでにインターネット上のサイボウズのグループウェアの中で出来上がっていて、マニュアルではなくメンバーの習慣として、真っ先にそこにアクセスした行動から生まれたものです。
この協会の場合、普段より連絡事項はもちろんですが、気軽な雑談やスケジュールの調整などもサイボウズの上で行われており、集団としての意思決定や情勢の把握はここでやるものという暗黙のコンセンサスが得られている状態だったからこそ、緊急時にも情報共有と意思決定の「場」として機能したのだと思います。
人は決して指示だけでは動きません。非常時はなおさらに情報が錯綜し、連絡網が混乱します。
普段から指示を伝える経路だけではなく、コミュニケーションをする「場」としてグループウェアが活用されている会社は、非常時でもきちんと機能します。
残念なことに、先日震災後の東北3県のユーザー様に取ったアンケートでは、震災時にサイボウズが役に立たなかったと回答した企業が全体の半分近くにのぼりました。
単に震災直後のサーバー被災や電話の不通のみならず、「習慣がなかった」「そこを使う認識がなかった」という回答は「場」として機能していなかったことで私たちの力不足を感じています。
また、「場」は、コミュニケーションの中心地であると同時に、経営層と社員の間に入る翻訳装置ですから、同じ指示でも「場」の雰囲気によって受け取られ方は変わります。経営変数として高い目標を掲げたとしても、それをチャレンジングと受け取るか、無謀な暴走と受け取るかは、「場」の空気が決定要因となります。
個人主義ではなく、チームワークで高い成果を出す日本の企業においては、「場」を整えることがすなわち社風を醸成することにつながります。
痛ましい災害は二度と起こって欲しくは無いですが、緊急時にも強い会社こそ真に強い会社です。
普段時も緊急時も前向きな「場」を作れるよう、サイボウズもグループウェアを通してご支援できればと思います。
※サイボウズが運営するロジカルチームワーク委員会では、11月26日の「いいチームの日」を記念して前日の11月25日に「場」のマネジメントの提唱者である一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏を招いてシンポジウムを開催します。参加お申し込みはまだ受付中ですので、ご興味のある方はぜひご来場ください。
詳細とお申し込みはこちらです。
また、グループウェアを活用して社内コミュニケーションの「場」をもっとよくする事例をお知りになりたい方は、ぜひこちらへご相談ください。