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もしも洞察力があったなら……。

なぜ自動車には外装箱がないのか

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昨晩深夜に及ぶまでとある仲間と「商品パッケージとは何か」について熱い議論をしていました。特に私たちが造ってご提供する「プロの職人さん向けの電動・空気工具」の商品パッケージとはなにか。

私の家には今日珍しくもありませんが一人では持つことができない大きなテレビがあります。忘れもしないこのテレビの納品日にはセットアップを兼ねて二人の仕事人が商品を運んで組み立ててくれました。比較的当時新しめのものだったので「これを取り扱うのは初めてです」とドキドキしながら、てきぱきと作業をしてくれました。

テレビが運び込まれてきたときにそれを包み込んでいたのは、型番とモノクロの写真イラストが印刷された無味乾燥な段ボール。開梱すると仕事人さんはそそくさと段ボールを折りたたんで片付けてしまいました。この場合の外装箱すなわちパッケージとは、物流機能重視で、その機能を果たしたらそこでお役目御免。わかりやすいですね。

たいがいの商品(「製品」は生産から倉庫まで。「商品」は倉庫出荷~販売までで便宜上呼び分けることにしています)は外装箱、つまりパッケージに覆われてお客さんのところに届くんですよね。ところが多くの人が利用または購入する一般消費者向けの商材でありながらこうした外装箱がほぼ存在しないものが大きく2つあります。

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(米国アトランタ郊外にある工機ホールディングスアメリカ社の物流センター)

それは車(自転車等軽車両も含みますが、便宜上自動車と読み替えてください)と不動産(主に家)です。たりめーだろと馬鹿げた話に聞こえるかもしれませんが、ここで改めて「なぜ車や不動産には外装箱がないのだろうか」を議論してみました。もちろん、大きすぎて箱で包むのに適さない、家はその場で作るから物流と無関係、車に至っては自分で運び込むつまり「自走」できるので梱包する必要がない。確かにそうですね。当然です。

でももう一歩違う視点で考えてみましょう。外装箱の役割の変化に注目するのです。周囲を見渡すと、なぜ一般消費財の外装箱はカラーで商品などが印刷された素敵なデザインになっているのでしょうか。AppleのiPhoneのように?一方、車や家に外装箱がないのはなぜなんでしょうか。

外装箱の役割は進化しています。もともとは物流目的。それがPOP(購買時点)化の広告化し、今や箱を開けるときのドキドキから演出する「購買体験」の大事な役割を担っています。そして未来は。。。

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そう。一般消費財の外装箱の役割を物流機能やPOP広告機能だけで考えるのは少し古くなってきているかもしれません。

消費者の価値観はモノからコトへ、なんていわれるようになってもう何年もたちますが、製造業のような現物現場現実主義文化だと「やっぱモノでしょ」とついなってしまいそうです。決して間違っていません。一方、車や家などは、外装そのものが外装箱のような役割をはたしていて、消費者はこの「中に入って得られる体験」を購入しているのだという視点で考えてみます。だから車や家には外装箱がいらないのだ、という主張は(後付けには聞こえますが)とても面白いと思いました。

これらの外装の役割とは、いかに中に入るまでのワクワクドキドキを演出できるかが大事なのではないか。ちょっと極端なたとえですが、車や家の外装を「外装箱」と見立てた時に得られるものを、私たちの商品の外装箱(パッケージ)に置き換えると、私たちの外装箱は、「消費者のワクワクドキドキを創出することが望ましい」との考えに至ったのです。これは、私たちが世間に約束する「極上のユーザー体験を創造する」ことと一致させていくことにほかなりません。

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ハイコーキ(HiKOKI)のブランドプロミスカー

今日はこのくらいにしておきます。

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