オバマ現象のカラクリ
感動しました。これまで数多のビジネス書を読んできましたが、感動した本は皆無に等しい。学び多くも、それらは、感動と言う情感への働きかけからはちょっと違うものだからです。一冊743円。得られる学びを考えれば、これは安い。
コミュニケーションのコンサルティングファーム、フライシュマンヒラード社長の田中慎一氏、ブルーカレント社長の本田哲也氏が上梓した新刊「オバマ現象のカラクリ」は様々な側面から本質的であり、革新的。それはちょうど、オバマ氏が大統領就任したことと同じように、新たな時代の幕開けを示唆するかのようです。
さて、同書の前半は、オバマ氏が大統領に選ばれるまでのコミュニケーション戦略について紐解く。大きな共感の醸成と、コミュニケーションレバレッジという、本人が有権者に働きかける直接コミュニケーションを超えた、国民同士が語り合う、間接コミュニケーションに拠るところが大きいという。まったく同感である。個人献金620億円を集め、ボランティア100万人を動員した大統領キャンペーンは、
- 空前絶後の巨大組織
- まれにみるチームスピリット
- インターネットを利用した組織作り
を実現したと説く。
後半は、コミュニケーションとは何かを深耕。その本質にかかわるパラグラフをご紹介します。
有史以来、人間は人を動かすために、様々な力を駆使してきた。
武力はそのひとつである武力とは、物理的な力に訴えて、相手を強制的に動かす方法である。もうひとつは財力。相手の物欲に訴える方法である。また、権威・権限を使うという方法もある。職制や法律、ルールなどの権威・権限を使って相手を動かすやり方である。いずれの方法も、強弱はあるにせよ、その力を行使した際には、なんらかの反動または反作用が生ずる。例えば、武力によって強制されれば、そこには怒りや恨みが残る。相手が応戦してくれば、警察沙汰である。金にものをいわせれば、反感やねたみを買う。金の切れ目が縁の切れ目で、その反動が怖い。権威・権限で無理やり押し込めば、不満が蓄積され、いつ爆発するかわからない。力を行使する限り、何らかの作用・反作用は避けられない。(中略)
(一方、)コミュニケーションとは、納得・共感してもらったうえで相手に動いてもらう力である。相手の自発性を促すため、反動、反作用が少ないのだ。(中略)(コミュニケーションとは、)自分が発信しているものがメッセージではない。相手に伝わったものがメッセージなのである。
故、本田宗一郎氏の言は、事業経営の直面する最大の課題こそ人の意識の壁、人の意識の硬直性と説く。
50万トン級の大型タンカーが曲がろうとして舵を切っても、曲がるまでに4-5キロメートルを進んでしまう。人間の思い込みや構造は、もっとイナーシア(inertia:慣性)が大きい。一回くらい舵を切っても、方向なんか変わらない。くどいほど、言って、言って、時間をかけないと、変わらない。
21世紀、私たちに時間をかける余裕はありません。今、何をすべきか、コミュニケーションの戦略とその活性化が大きな鍵を握っていると言えるでしょう。