ウィキノミクス--マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ
ウィキノミクスを読みました。466ページ、全10章(+11章=皆で作る、という提案)からなる、コラボレーションによる新たな開発・生産形態を分析した、ドンタプスコットと、アンソニーウィリアムズの共著です。
「インテリジェンスをネットワークの中心において制御するのではなく、ネットワークの端部においたからインターネットは革新のプラットフォームとなりえたのです」で締め くくる同書は、ソーシャルネットワークやWikiなどのツールを活用しながら、世界中の知性を結集して新たな開発を行うというアプローチを取り上げた本です。自分に立ち返ってみれば、PR2.0 など、私たちもコミュニケーションという仕事を通じて、様々な変化に日々出会っています。その変化をもっと構造的に理解をしたくて、この本を手にしてみました。
さて、Web2.0が繰り広げた新しいアプローチについて、ボーイングやIBM、ベストバイなどの具体的事例を交えながら、変化対応に強く、低コストですばやく実行できるプロダクションとは何かを紐解いています。また、同書の冒頭では、金鉱山会社ゴールドコープのエピソードを紹介。新たな鉱山を探すのに躍起になっていた同社は、世界中の人々に向け、鉱山を探し当てるコンテストを開催。従来のリソースでは不可能だった、多様な分野からの数多のアプローチが結集し、見事に新鉱山を探り当てたというもの。
旧来の、すべてを自社でまかなうアプローチを超えて、世界の叡智を結集して行われる開発・生産。このコラボレーションアプローチは、この先の時代の変化に大きく影響する、つまり、ドンタプスコットによれば、これこそがパラダイムシフトである、と述べているのです。
SF作家、コリードクトロウの言葉を引用しては、「鉄道(や自動車)の時代になり、蹄鉄が売れないとビールを飲みながらグチをこぼしても、蹄鉄が売れるわけではない。でも、蹄鉄工から自動車工に転身できれば、ご飯が食べられる。」としています。パラダイムの変化がおきているのならば、従来の手法に固執して、大きな機会損失をただ黙ってみているのではなく、自らその変化に適用して、次のチャンスという波に乗っていくことを真剣に検討すべきなのだと理解。コラボレーションという新時代を構造化して理解するために、とても役立ったのでした。