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夏目房之介の「で?」

3月4日 「津田青楓展」

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やっと練馬区立美術館「津田青楓展」に行ってきた。津田さんの戦後の静物の邦画などが実家の居間に懸かっていて親近感はあった。父ほよく名前を出していたが、僕などは多分お会いしていない。漱石の弟子で、画家でもあり、性格もあって愛された。父の持っていた「漱石と十弟子」は面白く読んだが、彼の絵はほとんど知らなかった。今回を逃せば全体を直接目にする機会はもうないだろう。彼は投げ花家元に生まれ、放浪の末図案家になり、やがて渡仏して絵を学び、プロレタリア美術に接近して投獄され、獄中転向する。岡本唐貴(白土三平の父)とも触れ合っている。また徴兵され203高地に看護兵として参戦、悲惨な経験を雑誌に寄稿している。そんなムチャクチャ面白い経緯を絵で見ることができた。僕には「描更紗鶏図衝立」(1916年頃)が一番面白くて、それはほとんど漫画なのだか、ずっと見ていくとなぜか1916〜7年の頃からすごく面白くなる。ところが、1916年は長男と漱石がなくなった年なのだ。興味深い。

写真の説明はありません。
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