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夏目房之介の「で?」

『ダンジョン飯』

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大学退官後、ふぬけとなり、論文はもちろん、マンガすらあまり読まなかった。物語の内に引込まれる娯楽小説ばかり読んでいた。そんなわけでマンガ売り場にもあまり行かずで、その結果、『ダンジョン飯』が14巻で完結していたことを今更知った。しかも完結編出たの2023年。2年前だぜ! 近所の書店に平台置きで全巻揃っていたのだ。あんなに大好きなマンガで楽しみにしていたのに、今まで全然気づかなかった。リハビリ必要かも。。どうやら9巻までしか読んでいなかったようだ。まず完結14巻を読み、次に10巻以降を買い込んで全部読んだ。最近ではこんなに面白い連載物はなくて、物語の構成もよくできていて、しかもユーモラスに描く余裕があり、基本的に大好きなタイプの作品である。九井諒子はなかなか力のある作家で、初期の短編もとてもいい。何と言っても魔界ものなのに、ひたすら魔物料理を食べまくるなんて話を一体他の誰が考えただろう。そして驚いたことに、その料理の絵があれこもこれも超うまそうなのだ。美食物でうまそうに料理が描けるのは、それまでよしながふみだと思っていたが、九井はタメを張っている。人は他の生命を食べないと生きていけない、というじつは生命にかかわる深い主題を最後にあらわにして、見事に幕を閉じた。
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