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夏目房之介の「で?」

山森宙史『「コミックス」のメディア史』青弓社

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山森宙史『「コミックス」のメディア史 モノとしての戦後マンガとその行方』(青弓社 2019.10.23) 2017年関西学院大学社会学研究科提出博士論文「戦後マンガの「物質性」に関する社会学的的研究 「コミックス」のメディア史分析を通じて」の「大幅な加筆と修正」(「おわりに」より)版。大変勉強になった。全体は「コミックス」と呼ばれてきた「マンガ単行本」ともいわれる領域を分析することで、マンガの「新たな「モノとしての認識枠組み」」を「メディア概念」として最構築する試みだといえる。私の世代でいえば、石子順造、瓜生吉則らの「メディアの物質性」や「場」への観点を、さらに抽象度を上げて「認識枠組み」として組み換え、紙媒体~電子媒体に架橋可能な場所に出ようとする試みにも見える。そのため、いささかややこしい論理構成にもなってもいる。提出される仮説がどこまで妥当性があり、今後どこまで使われるかは、まだそれなりの時間がたたないとわからないが、とりあえず現時点で問題系を自分なりに考え直すには、とてもいいきかっけになる本だろう。何よりもその膨大な参照引用の物量の大きさは圧倒的で、日頃不勉強で耳学問な私には勉強になった。とてもじゃないが、この本のような参照はできないなあ。

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