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夏目房之介の「で?」

2019.9.21 発表のしかたについて

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発表のしかたについて

2019815日~24日の英国出張で大英図書館での国際シンポを経験した。その際、日本人発表者のプレゼンテイションの問題を強く感じた。多くの日本人発表者が、時計を見ず、それどころかオーディエンスを見ずに、ただ自分で映す画面を見て、ひたすら自分のいいたいことを全部話そうとし、結果時間を超過しても平然としていた。そのあとの発表者が、それぞれ時間を調整して苦労することに、ほとんど顧慮していないようだった。

日本国内でもかつてそうした学会発表などが多く、また原稿読み上げの国会答弁のような発表が多かったが、最近は時間厳守も浸透してきている。しかし、日頃から自分も含め日本人の発表下手を感じている。

授業でも「読み上げ原稿禁止(留学生は別)」「ちゃんとオーディエンスを見て、語尾不明確なごにょごにょした話かたをしない」「声を大きく」など指導してきた。が、それ以前に発表がプレゼンテイションである、ということがわかっていないのだと思う。

自分のいいたいことを全部喋るのが発表ではない。目の前にいるオーディエンスに、制限された時間内で、自分の持っている情報から伝えたいエッセンスを効果的に印象づけること。そのためには、たとえ15分でも、画像と言葉を効率的に使って、キーワードを絞り、直接オーディエンスに語りかける必要がある。欧米の発表者がみんな前を向いて語りかけているのに比べると、日本人発表者は自分しか見ていないようだった。

しかし、社会人として仕事を実現していく上で、プレゼンの能力はきわめて重要なはずなのだ。パフォーマンスの重要性も認識されていい。

これは、英語ができるできないの問題ではなく(できるに越したことはないが)「伝える」ということの認識の問題なのである。この問題は今後も改善されなければならないだろう。後期のゼミでは、この問題を巡って一度レクチャーをしたい。多分、「マンガ夜話」での「夏目の目」でやってきたことなどが参考になるだろう。

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