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夏目房之介の「で?」

現代マンガ学講義9 「マンガ夜話」「夏目の目」の作り方

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2010後期.12  現代マンガ学講義9 「マンガ夜話」「夏目の目」の作り方

1)「マンガ夜話」2008617日放映 山田芳裕『へうげもの』(講談社「モーニング」’05年~ )

 「夏目の目」放映

2)「夏目の目」の作り方 映像1~5 制作過程

3)『へうげもの』「夏目の目」構成

]顔の表現

1 1巻 古田左介、信長よりの金か宝物を選ぶ場面

 ・表情描写とパースのデフォルメのマンガ 苦悶・矛盾を顔で、「勢い」を腕の描写で

 左介の性格と、本作品の主題を示す 左介、武将らの「権力」と「数寄」の「欲」

→二人の端正な顔が主題の対照を示す

2 1巻 千宗易と信長の出会い場面

 宗易=「無表情」 虚無のような顔 信長=権力志向 陽性のケレン →明暗の対比

3 4巻 天皇暗殺にビビる秀吉と見守る利休の顔

 三者の並列がドラマとなる=顔・表情のマンガの真骨頂

]わび数寄の表現

信長的「傾き(かぶき)」のケレン 対 利休的わび数寄 =背景

4 5巻 ノ貫(へちかん)のわび住いを訪れた古田への家の説明

 超利休的存在=ヘチカン 〈趣きを楽しむどころか読み解くのに疲れてしまうわ

5 5巻 次の見開き 家の構成要素の音喩化

 古田の位置 感性的な天然存在の愛嬌 主人公の愛嬌に歴史的な微妙なバランスを表象

6 6巻 利休の「消える手前」 忍法→魔球の伝統(表現としてはケレン

7 1巻 黒茶碗に目を見開く利休 無表情利休の愛嬌 キャラクターの魅力

]歴史 「武」とケレン→「文」とワビ数寄

8 4巻 古田〈安土の夢は終わったのだと〉 「武」/「数寄」=古田の場所から感じた時代の変容

9 4巻 秀吉の代になり京都の商人たちの話

 〈派手な店先が少し恥ずかしうなってきましてなぁ・・・・

 〈私の店も少しすすけたように工夫致しましたら・・・・値を上げても品物が飛ぶように売れましてなぁ

 「流行」というものと時代変化の機微を描いて秀逸

10 4巻 巻末ページ 古田〈数寄の天下を獲る!〉 「武」→「数寄」へ「天下取り」の対象が変更

→普及した「わび数寄」の矛盾 不易という流行→軽薄さや、わびっぽいウソに出会わねばならぬ利休の表情

11 5巻 古田の軽薄な「わび」家屋を見た利休の渋面

12 6巻 企まれたワビに騙された利休の渋面 顔のマンガの醍醐味

4)構成の解説

図版集合A→図1~3抽出、同様に集合B→図4~7、集合C→図8~12 →各カテゴリー整理

A「表情」、B「わび数寄」、C「歴史描写」 具体的集合・分類に各自「概念」を与えること

A=一目瞭然でわかる「面白さ」提示 B=抽象的主題「わび数寄」の表現と人物対比

C=作品を包む「歴史」のイメージ提示 歴史知識、概念の応用

5)「言葉」「概念」を与えること 抽象化

↑空間軸

|              抽象化レベル ―――→概念

|             宇宙           |
|          地球              |
|       国家                 |

|    社会                    |
|  自分、体                   応用可能
|今、ここ                      ↓

0――――――――――――――――→ 時間軸   別の歴史的時点

時間に属する言葉  朝、昼、夜 ・・・・ 話し言葉 音楽 ・・・・ 歴史 宇宙時間

空間 〃      部屋、家  ・・・・ 体 文字 絵  ・・・・ 世界 宇宙

別の概念(言葉)によるカテゴライズ (話し言葉、文字)=言語 (言語、絵、音楽)=記号、情報・・・・

「意味、感情を伝達する人間の記号を使った行為」=言語、絵、音楽、舞踊・・・・

6)対象を分割して比較対照してゆくこと 

文字 →アルファベットなど            → aそれ自体では「意味」をなさない「音」

   →日本語-→漢字 →概念=文字 → 中国語 → bそれ自体一つの「意味」を表す文字(絵の要素

        →かな →音=文字          → a,bの合体

「マンガ」→具体的な対象=本、雑誌、電子媒体・・・・ →媒体 →流通、市場 →経済

     →構成要素=絵、文字、コマ・・・・ →絵とは? 文字とは? コマとは? 相互関係は?

     →定義の問題=日本の漫画、欧米のコミック、BD、カトゥーン、カリカチュアなど・・・・

 絵 → 古代壁画、西洋美術、伝統絵画、子供のイタズラ描き、抽象画、具象画、案内記号

   → 写真、映画、舞台芸術 ・・・・

7)言葉→文章 関係性の問題 時空の錯綜

〈山路を登りながら、こう考えた。

知に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。〉

  夏目漱石『草枕』冒頭

(知 情 意地 世)=目に見えない抽象的な対象(時間) (角 棹 人)=目に見える対象(空間)→比喩

(立つ 流される 通す 窮屈 住みにくい)=一定時間を含む動作、状態(時/空)

(とかくに)=抽象概念を具象的に比喩した状態を結論に「関係づける」抽象的な言葉

隠された言葉 「誰が」(主語) 人の世→人を含まない世界 立つ→居る 類縁、対比の中で意味を汲む

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