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夏目房之介の「で?」

現代マンガ学講義(5) マンガを成り立たせるもの(1)

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1)「マンガ表現論」とコマの構造

マンガの「読み」 続き

●マンガの「読み」=コマとページによる絵・文字単位の構成+文脈的読み(先駆的社会的~作品内文脈)

可視要素=1)絵と文字、2)コマ・ページ・見開き、 不可視要素=3)時間と記憶(物語)の文脈

1)2)が分節、統合 →1~2)を単位として「時間」の記憶化した3)が統合

 不可視の記憶の文脈が、進むに従って各単位に部分としての意味を与え、「物語」へ統合し、かつ生成する

グルンステンによる文脈的「読み」

間接論理学は次の三つのレベルの分節=連鎖をとり扱うことになる。はじめの二つは同質的なもので、一つはイメージの鎖に、もう一つは言葉の鎖に関わる。三つめは混成的なもので、図像的なシークエンスと言語的なシークエンスとの分節=連節に関わるものだ。〉ティエリ・グルンステン『マンガのシステム コマはなぜ物語になるのか』青土社 2009年(仏初出99) 243~244p 図像・言語・物語文脈→〈分散的なネットワークという組織形式〉同上 276~277p媒体の表面で複数のコマが共存在しているという共時的な次元と、読みの通時的な次元〉同上 278p

※画像と言葉の「読み」がシークエンスとして連鎖し、互いに分節されることで連結→これらがページとして重なり、互いに想起・連想されることで物語化=相互に参照される共時/通時的ネットワークを形成

同じ頃、日本で夏目はどう考えていたか? 1 マンガにおける絵・コマ・言葉と「物語」の関係モデル

 夏目房之介『マンガの力 成熟する戦後マンガ』晶文社 99 42,45p 「“言葉”の反乱 表現論的梶原一騎試論」(初出95年) ※図の底辺が共時的次元とすれば垂直軸が通時的次元?

重要なことは、マンガという表現は、絵や言葉という内容を、コマ構成という形式に流し込んだような表現のしくみをもっているということです。これが現在、我々がマンガといっているものの、もっとも基本的な原理です。ただし言葉がなくてもマンガは成立しますが、絵とコマのどちらかがないとマンガは成り立ちません。その意味では、最低限マンガに必要な要素は絵とコマです。〉夏目房之介『マンガはなぜ面白いのか その表現と文法』NHK出版 97年 134p ※「マンガ表現論」では、可視的要素の具体的分析に重点を置き、不可視的要素は抽象度を上げると他媒体の「物語」生成と重複するため、重視していなかった。コマを巡る文脈的な「読み」のレベルは、グルンステンの仕事に多くの示唆を受けた。

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