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夏目房之介の「で?」

ジャン=マリ・ブイスー氏の発表概要2

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 [BDはなぜ日本マンガほど発展しなかったのか?]
 フランスのBD読者はまず戦後ベビーブーマーであった。彼らは大体8~9歳で読み始め、22歳くらいまで読み続けた。彼らが読んだのは50~70年代には『PILOT(ピロット』などの週刊BD誌で、約10万部ほど出ていた。人口比(仏人口は日本の約半分)でいえば、この数字はかなり多い。ただ雑誌の厚さは日本のようにはなく、30ページほどだった。検閲によってBDには日本のような大人向けマンガ・ジャンルが育たず、7歳から77歳までを読者ターゲットとすることをうたう「タンタン」のような雑誌が残る結果となった。
①(日本マンガとの比較でいえば?)60年代に少女向けBDの出版がストップし、BDのユニセクス化(実質男性作家中心)が進んだ。現在1300人のBD作家(画家、シナリオライター)のうち女性は約7%に過ぎない。
②ベビーブーマーが青年化したとき、ヤングアダルト向けジャンルが開拓できなかった。この点は70~80年代の日本と対比すると大きな違いだ。その理由のひとつは、フランスでは伝統的に作家が雑誌を作ってきたことがある。70年代『PILOT』のゴッシーニ編集長も『アステリクス』の脚本家だし、「週刊少年ジャンプ」のような読者カードを否定した。

 ※小田切博氏質問「日本で見ているとBDは、メビウスやシュイッテン、エンキ・ビラルなど、大人向けの作品が多くあるように思えるが、今のお話だとフランスにおとな向けBDがないかのようだ。そのへんについて」
 たしかにそうだが、フランスの大人向けBDには、たとえば『課長島耕作』シリーズなどが典型的だが、日本のような自分たちの現実に立脚した日常的な主題の作品[ベビーブーマーが自分を投影するような作品?]のジャンルはない。日本では、思春期からもう少し大人になった時期に向けた作品など、段階的に各層向けの多様な作品が用意されている。たとえば私の姉は長くBDを読まないが、『ブラックジャックによろしく』をとても気に入っている。また『ジパング』などもフランスで人気がある。そのように日本の大人マンガは、読者の今生きている現実の感覚に立脚している。それに対してBDの大人向けの作品はあくまで「イメージ」に立脚したものだ。だが、日本マンガが入ってきて、BDにも今までと違う大人向け作品が出てきているようにも思う。女性作家による自伝的な『ペルセポリス』なども、かつては考えられないスタイルで、アメリカのグラフィック・ノベルの影響だけではなく、日本マンガの影響を思わせる。

 ※藤本氏質問「女性向けBD衰退の理由は?」
 内容が保守的でニーズに合っていなかった。もともと女性読者も女性向けBDより男性向けを読む傾向があった(私にも姉がいて、私が男性誌を、彼女が女性誌を読んでいたが、彼女も男性誌を読みたがった)。加えて、当時の女性向けBDが女性たちの求めている内容でなかったのは、描いていたのが全員男性作家だったからだと思う。
 ※夏目確認「それは、60年代の女性の変化に男性作家ではついていけなかったということか?」
 少女向けBDの内容を詳しく把握してはいないので、そこまではわからない。

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