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夏目房之介の「で?」

本日、初ゼミの日 金水敏『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』

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先週ガイダンスを終え、本日は4~5限と初ゼミでした。方針説明と若干の自己紹介(学部生はまだ履修登録前なので院生のみ)ののち、二名ほどムチャ振りで自分の最近の研究について説明してもらい質疑。今年は4限を修士中心、5限を博士・聴講生中心の「キャラクター論」とし、昨年の経験から、発表と、その質疑を反映したレポート提出で、できるかぎり文章を書かせるつもり。

手塚アカデミーはすでに落選者が出ているようだが、他にいくつか展示などの情報と、本の紹介を。教科書指定した『マンガ学入門』は、4限で各自選んだ項目について発表してゆくことにした。

もうひとつ紹介したのは、バリで読了した金水敏『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』(岩波書店)。これは、すっごく面白い本だった。読みやすくて、キャッチーな話題の掴み方がいいだけでなく、歴史的に遡行してゆきながら、言葉の持っている様々な問題をあぶり出してゆくところはスリリングでさえある。役割語とは、一次的にいえば「・・・・なのじゃ」などの博士語、「・・・・ですのよ」などのお嬢様語、「・・・・アルよ」などの擬似中国人語など、実際には使われないにもかかわらず、それによってキャラクターを明確に掴めるような言葉。これらの存在をマンガを含めるフィクションの中で持つ機能、報道における翻訳語などの活用、背景としての標準語の成立、さらに実際に使われていた場合の歴史背景などを辿りつつ、ステロタイプという現象が人間社会において持つ機能の問題とすり合わせる。フィクションと実際の生活とのあわいで生じる微妙な部分におこる問題にも興味がわくし、ジェンダー論的なマンガ論などにも援用可能な枠組だと思う。

というわけで、少しその場での議論にからませながらゼミでも紹介してみました。
明日は、初講義です。

Comment(5)

コメント

こんにちは。こちらは最近「まんが」っていう用語の語源というか、というより“使い方・遣い方”に興味を持っています。カタカナのマンガ(現在では学術用語、またはジャンル名として使われる傾向が強くなって来ましたが。)では無くて、平たく平易な意味・応用としての「まんが」です。例えば背中に刺青(いれずみ)をしている人の事を“まんがをかいている”とうちのオヤジなどは言っていたのですけど(これは決して差別的な発現では無くて、日常的な表現です)、そんな事を思い出しつつ、平易な“manga”という「発音」の事を、“日常の言語の中で”←どう現象しているのか知りたくなってしまったのです。

 てわけで「マンガ」でも無く「漫画」でも無い日常語としての「まんが」っていう単語の世間一般の扱い方に基礎に興味持って来ました。
 夏目先生はどうお考えなのでしょうか?「まんが」の初歩としてこっちは考えちゃってしまってます。orz
 とふとこんな事書いてしまってごめんなさい。
 “役割語”についても興味持ってみます。

 簡単に言っちゃうと言語学的な「まんが」という言葉に興味を持っています。

もうひとつ。
 田川水泡先生に『滑稽の研究』か何か、っていう御著書が有られたと思うのですけど、ひらがなとしての「まんが」については、ひとつには“滑稽な”という意味があり、つまりは「おかしな」とか「ズレている」というか「変な」っていうような意味がエッセンスとして含まれているような気が致します。
 こう考えて正しいのかな…と思ったのですけど、どんなもんなんですかね?
 日常の人にとっては、例えばかつて、昭和40年代頃まではそんな意味や雰囲気、ムードを持っていた言葉だったように思うのですけど。「まんが」は。
 それが、いつのまにか「マンガ」になり、「漫画」という表記の言葉すらも越えて行く、歴史的な言語・用語の現象(例えば“学術用語”化。)・変遷はなんとなく興味があるような気がするんです。
 明治時代の、岡本一平あたりから洗ってみると面白いかも?
 やさしい言葉の意味としての「まんが」はそんな気がするんですけど、最近ではお子様にもそんな通じ方はするのでしょうか。など、随想です。

>woody-awareさん
「漫画」の語源とその用法の変遷については、宮本大人さんが論文書いていて、中国語の鳥の名から何でも雑にとりこむ書物というような意味に転化して、その絵としてのカタログとして「北斎漫画」となり、近代になってポンチ絵ではなく、も少しエライ背景を持つ語として「漫画」が用いられた経緯を検証してます。戦後の「漫画、まんが、マンガ」については、また別途の戦後マンガ批評史的な経緯がありますけども。

>ふーじぃ さん、
 早速の意外な程の速さの御返答ありがとうございます。感謝です。そうなんですね。
 それとリサーチして早速、宮本大人さんのミヤモメモをブックマーク(お気に入り)に登録させて頂きました。本当に助かります。ありがとうございました!

 戦後については、考えてみます。

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