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夏目房之介の「で?」

馬貴派八卦掌と通訳と基本項目

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何となく思いついたんで書いときますが。
L老師来日講習会のたびに通訳が必要となり、そのつど別の人が通訳をする。英語でエドワードが訳すこともあるし、美人の中国人留学生が中国語を日本語に訳したこともある。精誠八卦会講習会は伝統的に美人の通訳が多いのだが・・・・って、それは関係ないか。
えっと、そうじゃなくて、そのさい問題は中国語がベラベーラでも武術の通訳としては十分じゃないってことで、理念や概念、用語などの違いで色々問題がおきる。
たとえば中国語でも日常語と武術用語で違うだろう「功夫」を何て日本語に訳すかは文脈次第だろうが、場合によって「クンフー」といってしまったほうが通じやすい。何しろ、聞いているのは馬貴派を習っている人なわけだから、中国語一般では特殊な語や用法でも、そのところだけは遠藤老師を通じてすでに知っており、その文脈で理解したほうが早いからだ。でも、通訳の人は始めて聞く理解だったりするので、すごく苦労してるのがわかる。
せめて、

一応の基礎用語ぐらいはピックアップして頭に入れておいてもらったほうが、通訳の人も話す老師も聞く側も効率的だろうと思う。
僕自身、海外で講演を通訳してもらう場合、余裕があれば原稿を読んでもらい、用語を説明しておくことがある。それでも「リミテッド・アニメ」という語の通訳で聴衆から誤解を受けたことがある。通訳はアニメ用語なんて知らないので、多分「限界のある」というネガティブな意味の訳し方をしたんじゃないかと思う。
たとえば「含胸亀背(含胸抜背)」「扣歩擺歩」「下端腰」「抓地」など、日頃習う基礎用語については、基礎項目として辞書化しておいて、通訳に目を通してもらう必要があると思う。
この場合、日本人会員にとっても読みが統一されておらず、日本語的音読み、中国語風読みが混じっているが、それらは遠藤老師の用法に準じるしかないだろう。厳密には、それらは中国語でも日本語でもない。精誠八卦会の用語とでもいうべきものだ。
たとえば「含胸亀背」は通常「がんきょうきはい」と読み、「下端腰」「抓地」は「しゃおたんやお」「じょわでぃ」と読んでいる。一見、前者は日本語的な読みで、後者は中国語読みみたいだが、四声を伴わない発音はカタカナ英語と同じで擬似日本語である。
通訳の方は、原音でL老師が話すのを聞いて判断するので、事前に基礎単語を知らなければ、当然奇妙な訳になる。せっかく通訳してもらっても会員は隔靴掻痒な印象で聞くことになる。
そこで、まず通訳の方とエドワード、遠藤老師の間で「L老師がよく使う単語集」を作り、それぞれの対応表を作り、これに若干の説明を加えた簡便な辞書を作ることを提案してみたい。いってみれば、アンチョコである。当然、これは会員相互にも使えるので、遠藤老師に必要な語を足してもらいメールで配信してもらう。けっこう便利だと思う。
まず、上にあげたような基礎用語を並べ、読みを「日本での通常の読み方」と「原音(ピーインつき)」、さらにL老師が英語で同じ単語を何と訳しているかを対照表にする。
ただ、これだけでもすぐに壁にぶち当たると思う。たとえば、先日の講習会ではL老師が何度か「脊椎」について話したが、どうも話を聞いていると、いわゆる骨格上の脊椎とはちょっと違う気がする。腰の仙骨あたりまで入る概念みたいで、要するに体幹の中心を司る椎みたいなものを意味しようとしてるんじゃなかろうか。英語では、たんに「Back」といっていたように記憶する(Back boneとはいってなかったような)。そのあたりを厳密にL老師仕様でシェイプアップしようとすると非常に手間がかかり、そもそも違う言語相互を厳密に対応させることは不可能だから、どんどんドツボにはまる。
だから、あくまでも実際的なアンチョコとして機能する程度のものを作ったらいいと思うのである。そして、それは今後初心者を教える「指導者」にも必要な「共通言語」になるんじゃないだろうか。八戒さんの指摘するとおり、指導者のいうことは、いちいち違うはずで、どこかで同じ項目=目安を作っておくことが、あくまで「実際上」必要だと思うんだね。

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