花園06年後期集中レジュメ2
休憩
6)マンガ・リテラシーの成熟 音楽表現と「読者作者共同体」
マンガと音楽表現史
・古典的表現 五線譜音符など記号と踊り、歌の口
図20 高橋真琴『パリ~東京』56年(小学館クリティティブ 06年) 50~51p
図21 水野英子『HONEY HONEYのすてきな冒険』1 68年(双葉社文庫02年)54p
・劇画~ニューウェーブ変革期 若者文化としての音楽
図22 永島慎二『フーテン』COM版67~68年(ちくま文庫 88年)34~35p ジャズ喫茶 音喩の洪水→狭さ、稠密な音
図23 宮谷一彦『ラストステージ』70年(『ジャンピンジャックフラッシュ』三崎書房所収72年)68~69p ジャズ ライブハウスの環境 ペンタッチ 観客 「熱さ」 楽器の描写
図24 大友克洋『SO WHAT』78年(『GOOD WEATHER』綺譚社所収81年) 172~173p ロック 端正な表現 吹き出しの中の「ボム」 「話す」音 相対的に小さい音喩
図25 狩撫麻礼・谷口ジロー『LIVEオデッセイ』下 81年(双葉社文庫98年)196~197p、332~333p ロック、ブルース 音喩なし 動作とシチュエイションだけで音を再現
楽器(とくにエレキ・ギター)のリアリティの上昇=描き手も読者も身近
演奏体験とライブの身近さ→若者読者層の音楽身体の再現性が高まる=共有
「読者作者共同体」の共有する「若者音楽」体験の再現
→リテラシイの確立 70年代
7)メディア横断的な共有感覚 「面白さ」の合意
80年代 マンガの産業化 読者層の変化(中心が戦後ベビーブーマーから第一次おたく世代へ) 読者作者共同体のメディア体験変化(マンガ・アニメ・商品)
表現と受容、送り手と受け手の接近(ビックリハウスなど投稿文化) 消費者表現文化→コミケ、おたく文化 メディア横断的リテラシイの成立へ?
共通項としての「キャラ」 商品イメージとの相互浸透 奪回=同人誌表現?
上條淳士『TO-Y』
TVの「向こう」への想像力 「業界」物 タレントと「キャラ」 おしゃれな反抗?
すべてが交換可能な「キャラ」として消費されてゆく空間=「消費都市」化社会
図26 上條淳士『TO-Y』7 85~88年 (小学館サンデーコミックス 86年) 10~15p TO-Yのライバル?哀川陽司=吉川浩司?
「音」が聞こえた 内語表現とライブの描写(音喩なし)
「かっこよさ」→音のイメージ トーイの評価
図27 142~145、150~151p
ライブ演奏場面のリアリティ(時間分節機能の希薄化 音と「ノリ」の瞬間表現
洗練されたおしゃれな画像による再現 周囲の評価内語
ライブ会場全体の描写(個々の個性は消失 マスとしての観客) 記号的な音喩
参照→キネ旬ムック「マンガ夜話」4「めぞん一刻、櫻の園、TO-Y」99年
ポーズイはするが音は描かない→音が聞こえる逆説(いしかわじゅん発言)210~211p
前後のドラマのコマ割り、画像演出で「いかに凄いか」をじわじわと演出
→ハロルド作石『BECK』(99年~)なども同様
読者に類似の「体験」が再現されることが前提になっている
80年代 趣味的なメディア再現性の共有→メディア横断共有感覚の確立?
実在のスターなどとの類縁を連想させる手法の確立
『スラムダンク』のバスケ選手とかも含め
→マンガ・アニメ周辺のキャラ・イメージの自立化 ゲーム、実在のタレントとの相互参照→共有リテラシーの成立? 「テクストから遊離するキャラ」
参照
東浩紀『動物化するポストモダン』講談社現代新書 データベース消費
伊藤剛『テヅカ イズ デッド』NTT出版
休憩
8)マンガとTVドラマ 画像と映像
『のだめ』に先行するクラシック・マンガ
さそうあきら『神童』97~98年(1 双葉文庫 03年)
図28 同上 24~26p 記号とイメージによる楽曲
天才少女のイメージと音の連鎖を連想させる画像(音の順番に流れる時間
図29 258~263p コンクール場面 優等生的で生意気なライバル(?)と、天才少女のヘンな演奏(指をケガしているので鼻で弾く)→1位なしの2位(『のだめ』と同じ? 演奏場面で回り込むアングル→楽曲のイメージ
スパルタ教育された天才少女=そこから逃げたのが汚いのだめだった
→少女マンガ(逸脱)パターンとしてのシンデレラ(みにくい白鳥の子)としてののだめ(目立たない、ドジでダメな「私」はともかく「汚い少女」はヒロインになれなかった)
図30 282p 触って草野球監督の腰痛を治す主人公少女
少女の中(内面)に「音楽」があるという『神童』の構図
『のだめ』では王子様(イケメンで天才だが性格が悪い千秋)によって引き出される
マンガの中の参照・引用→マンガ内ジャンルによる変容 『神童』→『のだめ』
同じ主題が違う作家により編曲され、違うジャンルで演奏される(クラシック、ジャズ、ポップスなど) 表現の越境性に応じた受容構造が構成される
ここ10年のマンガ原作ドラマ120本以上?(「マンガ原作ドラマ作者の本音」アエラムック『AERAコミック ニッポンのマンガ』06年所収) 表参照
『ショムニ』(98年)マンガとはかなり違うが、それなりに面白く、原作の市場を広げた
『編集王』(00年)一部では不評だった。期待値を下回ったか?
『アンティーク 西洋骨董洋菓子店』(01年)BL要素を削除したが成功。
『ブラックジャックによろしく』(03年)顔面のマンガ表現がなくシリアスに?
「キャラ」を共通項としてメディアを横断的に成熟する(ように見える)リテラシー、受容の共有関係を何と呼ぶべきか?
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